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■ギュスターヴ・ドレとの対話 ~ 谷口 江里也

更新日2018/12/20



ギュスターヴ・ドレとの対話

[イントロダクション]

ギュスターヴ・ドレは1832年にフランスのストラスブールで生まれた画家です。ドレは若い頃から活躍し、1883年に50歳の若さで亡くなるまで超人的な働きをしました。そんなドレの作品からランダムに、私の気を引いた作品をピックアップして、その作品を巡って、すでに遠い世界にいるけれど、でもドレの作品を用いて多くの本を書いてきた私にとって、とても身近な存在であるドレと、これから気ままな対話をしてみたいと思います。

対話といっても、こちらが一方的に語りかけるスタイルですけれども、イメージとしては、語りかけている私の前にはいつもドレがいて、私の話を静かに聴いている、といった感じになるのではないかと思います。

考えてみれば、私と親しく接してくれたかけがえのない友人たちの中には、すでに亡くなってしまった人もいます。でもその人たちは今でも私の心の中で生きています。そして生前そうであったように、いつも何かを私に語りかけてくれます。その存在感はとても確かです。しかもそういう人たちとは、しょっちゅう会っていたわけではありませんから、その人たちが生きていた時であっても実際には普段は私の心のなかに、確かなイメージとして存在していました。違いがあるとすれば電話をかけて話したり、バルセロナやパリに行っても、もう会うことはできないのだなと思うと、ふっと寂しくなったりする、という程度の違いしかありません。

ドレも、私にとっては同じような存在です。ドレばかりではありません、ミロもピカソもベラスケスもゴメスさんもロルカもゴヤもセナも芭蕉も、私の心の中で生きています。そういう人たちは私にとって、たまたま電車にいあわせた人たちや、あまりよくは知らない人やテレビの中でよく見かける人たちとは、とうてい比べようがないくらい大切な人たちです。なぜならその人たちは、私に多くのことを、とりわけ美しいと思えることをたくさん教えてくれたからです。

あなたもそうです。もしドレと出会わなければ、私は視覚表現や空間やヨーロッパのことなどを、今よりずっと知らなかったでしょう。ですから私はこうして、これまで何度も見たあなたの作品を、もう一度あらためて見つめることで、また何かを教えてもらおうと、あるいは何かを確かめようと思っています。

私の独り言のようなドレとの対話を楽しんでいただければ幸いです。

谷口 江里也

 

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第1回:ドレが描いた最初の絵

 

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これはあなたが5歳の時に描いた、あなたの最初の絵の一枚です。おそらく、『ラ・フォンテーヌの寓話』の中の『アリとキリギリス(セミ)』のお話を描いたものでしょう。あなたは後に、35歳の時に『ラ・フォンテーヌの寓話』の全編に挿し絵を描くことになりますけれども、わずか5歳であなたが、物語という、文字で表現された空間を視覚化することに関心を抱いていたことに驚きます。

人間は、言葉や絵や音楽などによって、想いやイメージを時空間化して人に伝えることを実現した、とても素敵な存在です。もちろん言葉と音楽と絵では、伝え方も伝わり方も違いますけれど、けれどちゃんと表現されていれば、私たちはそこに表された、つまりはそこに誰もが入り込めるような確かさをもった時空間と触れ合うことができます。

10年経っても、50年経っても、あなたの作品のように100年以上経ってもそうすることができます。なんと素晴らしいことでしょう。人間にこんな魔法のようなことができることを、イメージ的な空間を創り出し、それを感受する力を人が持っているこということに、私は深い驚きを覚えますし、そのような素晴らしい力を人が持っているということに対して、感謝にも似た気持ちを抱かずにはいられません。

そしてあなたが、幼い頃からすでに直感的に、そのような魅力的なマジックと触れ合う喜びを感じ取っていたということには本当に驚いてしまいます。

-…つづく


 

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谷口 江里也
(たにぐち・えりや)
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本や歌や建築、さらには自治体や企業のシンボリックプロジェクトなどの、広い意味での空間創造を仕事とする表現哲学詩人、ヴィジョンアーキテクト。
主な著作に『鏡の向こうのつづれ織り』『鳥たちの夜』『空間構想事始』『天才たちのスペイン』、主な建築作品に『東京銀座資生堂ビル』『ラゾーナ川崎プラザ』『レストランikra』などがある。
なお音楽作品として、シンガーソングライター音羽信の作品として、アルバム『わすれがたみ』『OTOWA SHIN 2』などがある。

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■連載完了コラム
『ひとつひとつの確かさ』~表現哲学詩人 谷口江里也の映像詩(→改題『いまここで  Here and Now』)
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現代語訳『枕草子』 ~清少納言の『枕草子』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳
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現代語訳『風姿花伝』~世阿弥の『風姿花伝』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳[全63回]

岩の記憶、風の夢~my United Stars of Atlantis [全57回] *出版済み

もう一つの世界との対話~谷口江里也と海藤春樹のイメージトリップ[全24回]
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鏡の向こうのつづれ織り~谷口江里也のとっておきのクリエイティヴ時空[全24回]
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