■もう一つの世界との対話 〜谷口江里也と海藤春樹のイメージトリップ
第七話 卵をくれたワニとの対話  4/4
更新日2005/12/08
 
だからこそあなた様に、大切な卵を託したんじゃないですか
どんな子供であっても子供には、卵と同じように、無限の可能性がございます
今申し上げましたように、私どもが、人間に卵を託しますのは
これが初めてでございます、この結果がどうなるかは、もちろん誰にも分かりません
このことが、私どもワニ族にとって、はたして凶となるか吉となるか
正直に申し上げて、私どもの間でも様々な意見がございました、ありましたが
しかし最終的には、我々ワニ族の生活領域が崩壊の危機に直面している現在
それを打破する最大のキーポイントが、人間との共存であることが明白である現在
ここは思い切って、我々の卵を、我々の未来を、一度人間に託してみるべきではないか
そこからなにか、我々の頭ではとうてい思い描けないような未来が広がらないと
果たして誰が言えましょう、つまり、あなた様に託した卵が
やがて私どもワニ族の救世主となるかもしれないのです
そんな一縷の望みを託しうるのは、どうかんがえても、子供以外にありません
もちろん、せっかく託した卵が、単なる犠牲になってしまわないとは限りません
しかし、どんなことにもリスクはつきものです


そしてこれは、リスクを負うに値する、ワニ族起死回生のプロジェクトです
ただこうしたことは、いかに重要とはいえ、あくまでもわたくしどもの勝手な事情です
真っ白な卵には、そんなことはわかりません、わかりようもありません
またあなた様にそのことを説明したのでは、あまりにも荷が重いでしょう
そんな重荷をはじめから背負ってしまったのでは、育つ卵もまともには育ちません
また、このようにお育て下さいと、はじめからお願いをするのは
育ててくれるあなた様にたいして余りにも失礼です
しかも卵には、ひとつひとつ、それぞれの個性と可能性がございます
それが育つ行く末を、あらかじめ、過去から今を生きる私どもが決めてしまったのでは
せっかく卵を託す意味がございません、それにそのことがかえって
卵の可能性を狭めることにもなりかねません、ですからあえて全てを白紙で
お託ししたのでございます、そうしてこその信頼、そうしてこその希望と信じて……

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話しを聞いているうちに、ぼくはだんだん、ワニが好きになってきた
そしてどうなるか分からないけれど、この卵を、自分で育ててみようと思った

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