■挨拶は「もうごはん食べた?」 〜バンコク街角通信

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。


第1回:挨拶は「もうごはん食べた?」
第2回:果物で知る季節
第3回:懐かしきふるさとの味
―ソムタム―

第4回:インスタント麺のサラダ
―ヤム・マーマー―

第5回:タイ風洋食?
―パット・マカロニー―

第6回:ほかほかご飯に卵焼き
―カイ・ヂヨウ―

第7回:タイといえばやっぱり?
―トムヤムクン―

第8回:記憶の中の混ぜご飯
―カーオ・クルック・カピ―

第9回:ピンクのスープの海鮮麺
―クエッティアオ・イェンターフォー ―

第10回:蟹を食べるときゃ
―プー・パッ・ポン・カリー―

第11回:川魚をおいしく
―プラチョン・ヤーン・グルア―

第12回:家族団欒のひととき
―ムー・ガタ―

第13回:黒くてつるん
―チャオクワイ―

第14回:南国で囲む鍋料理
―タイスキ―

第15回:バンコクで日本の味
―焼きそばに餃子―

第16回:バンコク屋台紀行1
―深夜のカオトム―



■連載完了コラム
■My Bangkok Life
〜暮らしてわかったマイペンライの国
 
[全29回]


■更新予定日:隔週木曜日

第17回:バンコク屋台紀行2―道端のアイスミルクティー ―

更新日2004/02/26


バンコクという街には、自動販売機というものが恐ろしく少ない。それは単純に、機械の購入費と人件費を比べたときに、タイでは人件費の方がはるかに安上がりだという理由からだと思う。

買い手の側から意見を言わせてもらうと、硬貨を入れてボタンを押せばすぐに商品を手にできるのは確かに便利だけど、殺伐としていてなんだか味気ない。わたしの好きなミルクティーも、缶の金属やペットボトルのプラスティックの風味が混じっているような気になってしまう。目の前にいる人が作ってくれたミルクティーは何が入っているか明確だし、何より自分の好みにオーダーできるのがいい。

迅速な自動販売機の代わりに、バンコクには飲み物屋台がある。ビンに入った清涼飲料水の他に、目の前でしゅんしゅんと沸いたお湯を使って、コーヒー、紅茶、ココアといった飲み物を作ってくれる。但し、コーヒーはタマリンドの実を使った“オーリエン(タイ風コーヒー)”だし、紅茶の茶葉は煮出すと紅色ではなくてオレンジ色をしている。

小さなガラスのコップに、大さじに何杯もの白砂糖を入れて、濃く煮出した紅茶を注ぎ入れる。それをぐるぐるとかき混ぜて砂糖が完全に溶けたら、コンデンスミルクを加え、ビニール袋に入れておいたクラッシュアイスの上に注ぎ込む。そして仕上げにコンデンスミルクを惜しげもなくたっぷりとかける。熱い紅茶が氷を瞬時に溶かし、袋の中は程よい濃さと甘さと冷たさになってくれる。タイのアイスミルクティー、“チャー・イェン”のでき上がりだ。


チャー・イェンを作る飲み物屋台

初めてこのチャー・イェンを味見したときは、あまりの甘さにびっくりしたものだが、それを買ったタイの友人は、「ものすごく暑いときにこのチャー・イェンを飲むと、暑さがスーッとひいていく気がする」と言っていた。それを聞いて、「こんなに甘ったるいものを飲んで、そんなに爽やかな気分になるものなのか」と疑惑の眼差しを向けたわたしが、今ではチャー・イェンのファンになっているから不思議なものだ。

日本にいたときは、コーヒーや紅茶はいつも砂糖を入れず、市販の清涼飲料水はめったに口にしなかったわたしだが、今はその数倍の頻度で甘い飲み物を口にしている。かといって、太るわけでもなく、血糖値が上がるわけでもない。あの大量の砂糖は、酷暑ゆえに体が自然に求め、エネルギーとして直ちに消費されてしまっているとしか考えられない。

紫外線が肌を突き刺すような暑さのときに、外を歩いていたらまずチャー・イェン。さすがに暑さはひいてはいかないが、そのこくのある甘さと氷のひんやり感に、汗を拭きながらほっと一息ついてしまう。

 

 

最終回:タイ人の舌はどこへ行く?


 
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