第17回:バンコク屋台紀行2―道端のアイスミルクティー ―
更新日2004/02/26
バンコクという街には、自動販売機というものが恐ろしく少ない。それは単純に、機械の購入費と人件費を比べたときに、タイでは人件費の方がはるかに安上がりだという理由からだと思う。
買い手の側から意見を言わせてもらうと、硬貨を入れてボタンを押せばすぐに商品を手にできるのは確かに便利だけど、殺伐としていてなんだか味気ない。わたしの好きなミルクティーも、缶の金属やペットボトルのプラスティックの風味が混じっているような気になってしまう。目の前にいる人が作ってくれたミルクティーは何が入っているか明確だし、何より自分の好みにオーダーできるのがいい。
迅速な自動販売機の代わりに、バンコクには飲み物屋台がある。ビンに入った清涼飲料水の他に、目の前でしゅんしゅんと沸いたお湯を使って、コーヒー、紅茶、ココアといった飲み物を作ってくれる。但し、コーヒーはタマリンドの実を使った“オーリエン(タイ風コーヒー)”だし、紅茶の茶葉は煮出すと紅色ではなくてオレンジ色をしている。
小さなガラスのコップに、大さじに何杯もの白砂糖を入れて、濃く煮出した紅茶を注ぎ入れる。それをぐるぐるとかき混ぜて砂糖が完全に溶けたら、コンデンスミルクを加え、ビニール袋に入れておいたクラッシュアイスの上に注ぎ込む。そして仕上げにコンデンスミルクを惜しげもなくたっぷりとかける。熱い紅茶が氷を瞬時に溶かし、袋の中は程よい濃さと甘さと冷たさになってくれる。タイのアイスミルクティー、“チャー・イェン”のでき上がりだ。

チャー・イェンを作る飲み物屋台
初めてこのチャー・イェンを味見したときは、あまりの甘さにびっくりしたものだが、それを買ったタイの友人は、「ものすごく暑いときにこのチャー・イェンを飲むと、暑さがスーッとひいていく気がする」と言っていた。それを聞いて、「こんなに甘ったるいものを飲んで、そんなに爽やかな気分になるものなのか」と疑惑の眼差しを向けたわたしが、今ではチャー・イェンのファンになっているから不思議なものだ。
日本にいたときは、コーヒーや紅茶はいつも砂糖を入れず、市販の清涼飲料水はめったに口にしなかったわたしだが、今はその数倍の頻度で甘い飲み物を口にしている。かといって、太るわけでもなく、血糖値が上がるわけでもない。あの大量の砂糖は、酷暑ゆえに体が自然に求め、エネルギーとして直ちに消費されてしまっているとしか考えられない。
紫外線が肌を突き刺すような暑さのときに、外を歩いていたらまずチャー・イェン。さすがに暑さはひいてはいかないが、そのこくのある甘さと氷のひんやり感に、汗を拭きながらほっと一息ついてしまう。
最終回:タイ人の舌はどこへ行く?
