■挨拶は「もうごはん食べた?」 〜バンコク街角通信

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。


第1回:挨拶は「もうごはん食べた?」
第2回:果物で知る季節
第3回:懐かしきふるさとの味
―ソムタム―

第4回:インスタント麺のサラダ
―ヤム・マーマー―

第5回:タイ風洋食?
―パット・マカロニー―

第6回:ほかほかご飯に卵焼き
―カイ・ヂヨウ―

第7回:タイといえばやっぱり?
―トムヤムクン―

第8回:記憶の中の混ぜご飯
―カーオ・クルック・カピ―

第9回:ピンクのスープの海鮮麺
―クエッティアオ・イェンターフォー ―

第10回:蟹を食べるときゃ
―プー・パッ・ポン・カリー―

第11回:川魚をおいしく
―プラチョン・ヤーン・グルア―

第12回:家族団欒のひととき
―ムー・ガタ―

第13回:黒くてつるん
―チャオクワイ―

第14回:南国で囲む鍋料理
―タイスキ―

第15回:バンコクで日本の味
―焼きそばに餃子―

第16回:バンコク屋台紀行1
―深夜のカオトム―

第17回:バンコク屋台紀行2
―道端のアイスミルクティー ―


■連載完了コラム
■My Bangkok Life
〜暮らしてわかったマイペンライの国
 
[全29回]


■更新予定日:隔週木曜日

最終回:タイ人の舌はどこへ行く?

更新日2004/03/18


それはもう7年以上も前のこと。タイに住む前に読んだある本の中に、「タイ人はタイ料理しか口にしない」という一文を目にしたことがある。それは、タイの食文化は日本とは違いますよという意味合いでもあっただろうし、タイ人の食べず嫌いを揶揄するような意味合いもあったと思う。

しかし、ここ最近、それはほんの2年くらい前からだと思うのだが、その認識を変えないといけないという思いにとらわれている。タイの人の、特にバンコクの人の味覚は、明らかに以前とは異なってきている。


揚げバジルを乗せたピザ

約1年前から継続中の緑茶・抹茶ブームにしたってそうだ。ワタシがタイに住み始めたばかりの約7年前は、タイ人にとっての「お茶」は、ミルク&砂糖たっぷりの「チャー・イェン(アイスミルクティー)」だったからだ。それがどうだろう。コンビニの飲料ケースにはメーカー各社が競うようにずらりと緑茶飲料が並び、それが次々と消費者の手に取られていく。

日本食という食べものも、一番身近で手軽な外国の食べものになったと思う。ちょっと大きなショッピングセンターに行けば、日本食のチェーン店が必ず1店は出店しているし、BTSのサイアム駅にはテイクアウト専門の寿司ショップがあったりする。

ステーキというジャンルも外食メニューの中に確実に位置付けられた。牛肉のステーキだけでなく、豚、鶏、魚ありと、選択肢はなぜか「アーハーン・ターム・サン(お好み調理)」屋台並みで、その辺はタイだなあと思ったりするのだけど。

「サラダが好き」というタイ人女性も多い。青パパイヤの「ソムタム」ではなくて、れっきとしたサラダなのだ。ピザチェーン店でサラダバイキングを嬉々として取り分ける風景は、もう珍しいものではなくなった。朝の通勤時のシーロム通りには、サラダ屋台なんていうのもお目見えして、袋入りのサラダとサンドウィッチを売っていたりする。

ワタシの勤務先では、上司のおごりでランチに日本食店に行くことが多いのだが、タイ人スタッフを連れて行くと、「寿司セットのA」なんてオーダーをして、おいしそうに寿司にかぶりついていたりする。「生の魚が食べられるの?」というのは、日本人側が勝手に思い込んでいることで、なんのことはない、ワタシたちの知らないところで、どんどんそんなことがが当たり前になっている。

タイ人の味覚の多様化は、タイの経済が上向いて、しかも、途上国から中進国へ、中進国から先進国へと歩み始める過程における、社会全体の当然の変化なのかもしれない。それは、ワタシたち外国人が好むと好まざるとに関わらず、これからますます拍車がかかることだろう。そして、いつか、ワタシたちの中でのタイという国が、実はノスタルジックなそれになってしまったとしても……。

(完)

 

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