第7回:タイといえばやっぱり?―トムヤムクン―
更新日2003/09/25
タイ料理にそれほど通じていない人でも、トムヤムクンというスープはご存知だろう。世界三大スープ(
※)にも数えられるくらいなのだから、さぞかし美味なのに違いないと思っていた。
タイ料理を形容するときによく、“甘・辛・酸のハーモニー”などという言葉が使われるが、わたしが初めてトムヤムクンを食べたときはその強烈な辛さだけが印象に残り、ハーモニーなどという愛らしい表現とは程遠かった記憶がある。

トムヤム・ルアムミット(ミックス・トムヤム)
トムヤムクンのクンは海老を指しているが、なにも海老だけがトムヤムスープの専売特許というわけではない。屋台のお惣菜になると、実に様々なトムヤムスープがある。豚足のトムヤム、骨付き鶏肉のトムヤム、烏賊や海老や貝などのシーフードを取り混ぜればトムヤム・タレー(海の意)、肉やら魚介類やらをごちゃ混ぜにすれば、トムヤム・ルアムミット(ミックスの意)になる。
いろんなトムヤムを食べ比べてみれば、具によってスープの味にもはっきり違いが出ているのがわかる。海の幸を具にした場合はごちそうっぽい感じがするけれど、山の幸の場合は少し野暮ったくて、でも普段のご飯のおかずにはぴったりだ。
だいぶ以前に、「バンコクで一番おいしいトムヤムクンを出す店を探してください」という依頼を受けたことがある。そのときにわかったのは、タイ人ですら、「この店のトムヤムクンがナンバーワン」と、自信を持って言えないことだった。聞く人聞く人に、「その人の好みによるしね……」などというもっともらしい言い訳をされてしまい、結局結論は出せずじまいとなってしまった。
同じトムヤムクンでも、調味の方法で味がぐんと変わってくる。ココナッツミルクを入れるところもあれば、ナムプリック・パオ(唐辛子味噌)を入れるところもある。具にブラックタイガーを使うところもあれば、豪勢に伊勢海老を使うところもある。店が違えば材料や調味料の分量すらも微妙に違い、それを好きか否かは個人の味覚の違いというところなのだろう。
しかし、一番初めに受けたお粗末な印象とは裏腹に、トムヤムスープは今やわたしのスタミナ食になりつつある。大量に入っているカー(南姜)とタクライ(レモングラス)が体に良さそうな感じがするからだ。カーには胃腸の動きをスムーズにする作用があり、タクライには解熱・鎮静・発汗作用がある。タイの人の食卓にはトムヤムスープが身近だから、夏バテなんて言葉とは無縁なのかもしれない。
※世界三大スープには諸説があって、トムヤムクンに加えてふかひれスープ、ボルシチ、ブイヤベース、コンソメスープのうち、三つを組み合わせてそう呼んでいる場合が多い。もちろんトムヤムクンは含まれている場合もあれば、外されている場合もある。
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