■挨拶は「もうごはん食べた?」 〜バンコク街角通信

増成 ヒトミ
(ますなり・ひとみ)


1968年生まれ。埼玉育ち。大学卒業後勤め人を経て、97年からタイのバンコク在住。几帳面を絵に書いたような性格が、タイに来てから後天性マイペンライ症候群に。「ヒトミのバンコクな毎日」もどうぞ。


第1回:挨拶は「もうごはん食べた?」
第2回:果物で知る季節
第3回:懐かしきふるさとの味
―ソムタム―

第4回:インスタント麺のサラダ
―ヤム・マーマー―

第5回:タイ風洋食?
―パット・マカロニー―

第6回:ほかほかご飯に卵焼き
―カイ・ヂヨウ―

第7回:タイといえばやっぱり?
―トムヤムクン―

第8回:記憶の中の混ぜご飯
―カーオ・クルック・カピ―

第9回:ピンクのスープの海鮮麺
―クエッティアオ・イェンターフォー ―

第10回:蟹を食べるときゃ
―プー・パッ・ポン・カリー―

第11回:川魚をおいしく
―プラチョン・ヤーン・グルア―




■連載完了コラム
■My Bangkok Life
〜暮らしてわかったマイペンライの国
 
[全29回]


■更新予定日:隔週木曜日

第12回:家族団欒のひととき ―ムー・ガタ―

更新日2003/12/04


タイにはDAIDOMON(大同門)という焼肉チェーン店がある。焼肉といっても、日本人のイメージするそれとはひと味もふた味も違う。タイ人の大半は仏教徒で、一見、イスラム教徒などのように食生活に細かい制約を持たないように見えるが、宗派によっては牛肉を口にしない人がいる。

だからこの焼肉チェーンも、メインは豚肉に鶏肉だ。それに、ルークチン(つみれ)や竹輪などの魚肉を中心にした練り物、タイのハム、ムーヨーなどを一緒に焼いて食べる。鉄板の周囲にはお堀のようにスープを入れるスペースがあり、そこでは野菜や春雨をタイスキのようにして煮て食べる。このスタイルは、「焼肉」と「しゃぶしゃぶ」を合わせて、「ヤキシャブ」と呼ばれている。

DAIDOMONに初めて行ったのは、もう6年以上も前のことだ。日本語を教えてほしいと言ってきた男性の観光ガイドが、「ここはおいしいよ」と太鼓判を押した。席につくなり出てきたのが、先の豚肉やら鶏肉やらで、わたしはそれだけでげんなりしてしまった。日本から来たばかりのわたしにとっては、焼肉はやはり牛肉を焼いて食べるもので、豚や鶏は亜流を通り越して、言葉は悪いが貧乏くさいというイメージしか持てなかったからだ。



ムー・ガタ(豚鉄板焼き)

その豚鶏焼肉の屋台バージョンが、ムー・ガタ(豚鉄板焼き)である。ムー・ヤーン・ガオリー(韓国豚焼肉)とも呼ばれることもある。炭が入った七輪に、アルミ製のジンギスカン鍋に似た鍋を乗せ、味付けされた豚の正肉、レバー、腸などを焼いて食べる。もちろん鍋の縁にはスープを入れるスペースがあり、そこで野菜を煮て食べる。チェーン店で食べる豚肉はなんだか味気なかったのに、屋外で肉の焼ける音や煙に囲まれながら食べる豚肉は、実に野趣にあふれている。

数年前からは、このムー・ガタにビュッフェ形式が定着して、一人前69バーツという店があちこちにできている。わたしも先週、近所のムー・ガタ屋に出かけたのだが、日曜日だということもあって、大勢の家族連れでにぎわっていた。豚肉は正肉、脂の乗ったカルビ、黒胡椒風味、レバーとバラエティに富んでいる。他にはタイ人の大好きな蟹かまなんていうのもあった。

肉や野菜を思う存分取り分け、皆で鍋をつつき合う。タイスキもそうだけれど、このムー・ガタがタイ人に好まれるのは、鍋を中心にして団欒が楽しめることではないかと思う。身近な人たちと楽しみながら摂る食事は、どんな豪華な料理よりもおいしくて、幸せな気分にさせてくれる。

 

 

第13回:黒くてつるん―チャオクワイ―


 
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