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■亜米利加よもやま通信 ~コロラドロッキーの山裾の町から

第582回:報道の自由、言論の自由

更新日2018/10/18



アメリカ人は自分の国、アメリカ合衆国が世界で最も民主主義が発達し、言論の自由、報道の自由が保障されている…と頭から信じ込んでいる傾向がとても強いです。アメリカに比べると他の国は自由がない…とアメリカ的民衆主義が最高のモノだと、疑うことを知らないのです。
 
ところが、“国境なき記者団”(Reporters without Borders)は、はっきりとアメリカを言論の自由の敵の国として名指しで挙げているのです。敵と指名されている国は、北朝鮮、イラン、中国、ロシアと、今日この頃、トランプ大統領のオトモダチの国々も一緒に挙げられていて、何やら、今世界を牛耳っている国々、アメリカと急に仲良くなったり、選挙でお世話になったり、口喧嘩をしている国々と同程度の報道の自由しかない国々なのです。この“国境なき記者団”の“報道の自由ランキング”(Press Freedom Index)によれば、アメリカは民主主義と銘打っている国の中では最下位クラスの47位なのです。

ところが、日本はそれ以下で、2017年には72位と世界180ヵ国の中では真ん中より少し上?とも言えますが、ヨーロッパの国々、ともかく大戦後すぐに民主主義を掲げた国としては最下位に近いのです。アフリカのソレトやモンゴル、ジョージア、韓国、エルサルバドールの方が“報道の自由ランキング”では上なのです。

日本は2010年の鳩山由紀夫首相の時には11位で、北欧の国々に迫るほど、報道の自由があったはずなのですが、今の安部首相になってから、急激に知る権利が失われてきたようなのです。これは『特定秘密保護法』という、そんな法律を提示するのでさえ民主主義に対する挑戦とみなされるような前世紀的法案を成立させたことが大きいでしょう。それに加えて、福島の原発の安全性のデーターが公開されず、日本政府には情報公開の基本姿勢がないとみなされたからでしょう。

現在、安部政権を揺るがしている森友学園問題のもみ消し工作に対し、おそらく日本人の大半は“臭い”と感じ、安部さんは即”臭いものには蓋をしろ“を実行したと思っていることでしょう。

今年の“報道の自由ランキング”は、この事件だけでさらに下がるのは確実です。

日本の記者クラブ制度は、昔から外国人ジャーナリスト、日本人のフリー、または弱小新聞、雑誌の記者を締め出してきました。知る権利を強く打ち出すべきジャーナリストが、クラブ仲間の狭い利権を、早く言えば、政府や官僚が犬に餌を与えるように漏らす情報にしがみつき、それをフリーや外国人ジャーナリストに分け与えることなく、自分たち仲間で享受してるのです。今では日本語を流暢に操る外国人ジャーナリストがたくさんいますが、外国人という理由だけで、外国人記者クラブへ行けと追いやるのです。

もう一つ、日本に報道の自由がない、少ないと槍玉に挙げられる理由は、電波規制です。独占的にNHKが牛耳ってきて、既存するテレビ、ラジオ局も既得権を守ることばかり忙しく、新たに局を開設することは不可能に近い状態だからです。

旧態依然とした放送制度、NHKと電波管理局が統制している報道には第三者が割り込むことはできず、自由に知る権利などないのです。正面切って、政府に噛み付くテレビ局を新しく開設するのは、夢のまた夢、ミッション・インポシブルなのです。健全な批判を殺せば、後は独裁しかありません。

“国境なき記者団”は元々拘束されたジャーナリストを救出し、万が一取材の過程で亡くなったジャーナリストの家族を援助しようという意図で、フランス人ロベール・メナール氏が1985年に設立しました。次第にその輪を広げ、様々な国の選挙が公正に行われているかを監視し、立ち会い(許されれば)、また政府がどのように報道を検閲し、禁止しているかを照査するようになりました。

私たちは、なんとはなく自分は自由で、聞きたい、知りたい情報はいつでも手に入ると思い込んでいます。もうナチスの焚書や北朝鮮的報道管制なんか自分の国には起こり得ない、有り得ないことだとどこかで信じているのです。それだけ、アメリカや日本の政府は国民を巧みにフィルターを通したニュースだけを流すことで、洗脳していることになるのでしょう。日本の報道の自由は、一体そんな国がどこにあるのというくらい、満足な国家として成り立っていないような小国、発展途上国と同列になっているのです。

なんだか、私に似つかわしくないテーマになってしまいましたが、“報道の自由ランキング”で私が深く拘わっている日本とアメリカの順位が余りに低いのにショックを受け、チョットしたパニックに陥り、書いてしまいました。

政治的人間でない私でも、報道の自由が失われる時、警察国家、軍事国家が生まれ、党や個人の独裁政権に移行していく危険性が大きくなると信じています。

-…つづく

 

 

第583回:Homo currere(走る人)、90Kmウルトラマラソン

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Grace Joy
(グレース・ジョイ)
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中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。

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