■グレートプレーンズのそよ風 〜アメリカ中西部今昔物語


Grace Joy
(グレース・ジョイ)




中西部の田舎で生まれ育ったせいでょうか、今でも波打つ小麦畑や地平線まで広がる牧草畑を見ると鳥肌が立つほど感動します。

現在、コロラド州の田舎町の大学で言語学を教えています。専門の言語学の課程で敬語、擬音語を通じて日本語の面白さを知りました。



第1回:ウイルカーおじさん その1
第2回:ウイルカーおじさん その2
第3回:ウイルカーおじさん その3
第4回:私のポニィー その1
第5回:私のポニィー その2
第6回:私のポニィー その3
第7回:フリッツ その1


 

■更新予定日:毎週木曜日

第8回:フリッツ その2

更新日2006/04/20

犬族でも、初舞台で他の豪華な同属の前で緊張し、すっかり上がってしまうことがあるのを知りました。でも、それは私がコチコチに緊張しているのを感じ取ったからなのでしょうか。

スタート地点に立ちましたが、フリッツは私の足の甲の上に座り震えているのです。周りの雰囲気にすっかり呑み込まれ、私の言葉など全く耳に入らない様子なのです。

審査員の合図を待っている間、私は足に何か妙に暖かい液体が染みてくるのを感じました。なんとフリッツが私の足の上にオシッコを漏らしたのです。この日のために新調したテニスシューズの上にです。

それでも、私は何事もなかったかのように、フリッツを両手でステイの位置につかせて、20メートルほど離れたコールポジション(犬を呼ぶ位置)まで行きました。振り返るとフリッツはいかにも不安げな表情で周囲を落ち着きなく見回しています。

私が「フリッツ、カモン」と呼んでも、周りの騒音と華麗な同属たちにすっかり気を奪われ、動転して動こうとしないのです。何度も大声で呼ぶのは減点対象ですが、私は声をかぎりに「フリッツ!」と叫びました。

やっと私の声を聞きつけ、脱兎のごとく駆け出しました。それは今までの緊張から一気に開放され、バネがはじけたような走り方でした。見ている人もどうなることかと心配してくれていたのでしょう、歓声が上り拍手をしてくれる人までいました。そこまではまだ良かったのです。

犬でも自分が注目を一身に集めているのが分かるのでしょう、飛び出したフリッツは私の存在を全く無視し、まるで気が違ったようにフィールドをグルグルと走り出したのです。私がいくら呼んでも、全く聞く耳を持っていませんでした。見ている人たちは大笑いし、「フリッツ! フリッツ!」と叫ぶ人まで出てくる始末です。

そのうち、きっとフリッツが今まで嗅いだことのない魅惑的なメス犬の香水、誘惑的な香りを感知したのでしょう、フリッツの4倍はありそうなメスのコリーを追廻し始めたのです。私に何ができたでしょう。私もその2匹の後を追って走り出しました。

フリッツを捕まえたのは30分も経ってからでしょうか、私は恥ずかしさと、怒りに深く傷つき、すぐに家に帰ろうとお父さんに催促しました。お父さんは私を色々慰めた上、アイスクリームを買ってくれました。アイスクリームは冷蔵庫(電気もなかったけど)のない田舎暮らしで、年に2、3度、特別の機会にしか口にできない、私の一番好きなものでした。

そんなアイスクリームでさえおが屑を舐めているようで、味がしないほど私は傷つき、落ち込んでいたのでしょう。どうしたの、どうしてそんなにふさぎ込んでいるのとばかり、フリッツは慰めるように私の顔中嘗め回し、体を寄せてくるのでした。もっともわたしの頬に付いていたアイスクリームを舐めたかっただけかもしれませんが。

帰りの荷馬車の中で、フリッツは私の膝の上でイビキをかいて眠りこけ、時々草原を駆けているかのように足を動かし、ワウーンと吠えたりしました。 きっと今日出会ったメスのコリーの夢でも見ていたのでしょう。


お祖父さんのお父さん、お母さんです。
スコットランドからアメリカのウィスコンシン州に
渡ってきて、そこで亡くなっています。
今回のフリッツの記事とは関係ありませんが、
私のルーツで見つけることができた一番古い写真です。
1870〜80年頃だと思われます。


-…つづく

 

◇◆◇◇◇◆◇◇◇◆◇

 

◆ヴェルマおばあさんの田舎料理 4◆
『コーンブレッド』

どこの国の料理にも定番の組み合わせがありますが、このコーンブレッドはいつもポークアンドビーンズと一緒に供されます。比較的乾いた、ポロポロこぼれやすいコーンブレッドは、スープのような汁ものに合うからでしょう。

でもこれはアメリカの中西部だけのことのようです。南に下るにしたがってコーンブレッドは甘くなり、カリブの島々では、コーンフラワーを使ったケーキを意味しているのに驚いたことがあります。

黄金色に焼けたコーンブレッドは食卓を華やかにします。

コーンブレッド

◆材料:
コーンミール      カップ1杯
小 麦 粉       カップ1杯
お砂糖         大匙2杯
ベーキングパウダー 小さじ4杯
お  塩         小さじ 半杯
牛  乳         カップ1杯
ショートニング
(バター、マーガリン) カップ4分の1杯
卵             1個

1.オーブンを220度に暖めておきます。
2.20センチ四方、深さ5センチくらいのトレイにバターなどの油を引いておきます。 
3.上記のレシピすべてを大き目のボールに入れて、最初の20〜30秒はゆっくりと、そして1分くらい激しくかき混ぜます。
4.ボールの中の黄色いドロドロした液体状のものを、2.で用意しておいたトレイに流し込み、約20分〜25分焼きます。


コーンブレッドは失敗が少なく、簡単なので
ぜひ試してみてください。アツアツの時が美味しいです。
冷えると余計ボロボロに崩れやすくなってしまいます。

 


第9回:フリッツ その3


TOP-トップページ》 《コラム一覧 》 《のらりインタビュー》 コラム・バックナンバー
……………………………………現在連載コラム……………………………………
新・汽車旅日記 】 【店主の分け前 】 【フロンティア時代のアンチヒーローたち 〜西部女傑列伝4
亜米利加よもやま通信 】 【現代語訳『枕草子』 】 【よりみち
………………………………掲載完了イチオシコラム………………………………
  [拳銃家業 ] [貿易風の吹く島から ] [くらり、スペイン ] [グレートプレーンズのそよ風 ]
[フロンティア時代のアンチヒーローたち ]

   
このサイトに関するご意見・ご感想・お問い合わせはこちらまで。

Copyrights 2017 Norari