枕草子 第四回
その四 三月三日
三月三日は、うらうらと、陽の光ものどかで、ちょうど桃の花も咲き始め、不思議なことに柳なども、新芽を出そうとしているけれども、それがまだ、繭のなかにいるように、硬い皮で包まれていたりするのがとても可愛い。芽が出て葉が広がってしまっては、もう面白くない。
パッとあたりを明るくして咲く桜の枝を長めに折って、大きな瓶にさしたりすれば、本当に風情があって美しい。
白地の直衣(のうし)の下に、赤い下衣などを着けて、ほのかに桜色を表に浮かばせながら、その下衣の裾を、ほんの少し出す出袿(いだしうちぎ)のおしゃれをして、訪れ来る御客(まろうど)や、兄妹などが近くにいるなかで、いろんなお話をしたりするのは、とても楽しい。
※文中の色文字は清少納言が用いた用語をそのまま用いています。
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