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■現代語訳『枕草子』
  ~清少納言の『枕草子』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳
更新日2015/05/14



枕草子  第六回

その六  おなじことなれど


 おなじことなのに、聞く者によって違って聞こえるものは、法師の言葉、男の(ことば)づかい、女の詞づかい。下衆の詞づかいには、言われた言葉以上の意味がある。

 

その七 思わん子を

 もしも、大切に思っている子を、法師にしなくてはと思っていることほど、心苦しく、可哀そうにと思うことはない。
なにしろ法師が、どこにでもある木の一切れのように思われているのが、とってもかわいそう。

 精進料理みたいに、美味しくもないものを食べなくてはならないし、グッスリ眠ることだってままならない。若い時には、どんなことにだって興味を引かれものなのに、女の人がいたりすると、まるで忌わしいものでもあるかのように、見ないようにしながらついちらっと見たりなどもして、そうすると、それは心に安らぎがないからだと言われてしまったりする。

 ましてや、修験者などは、さらにさらに息苦しくも大変で、疲れてついうっかりうとうととしようものなら、寝てばっかりいるんじゃない、と怒られてしまう。なんて生きづらく狭苦しいところでしょう。

 まあ、そうはいっても、修験者が大変なのは昔のことで、今はずっとずっと楽ですけどね。

 

※文中の色文字清少納言が用いた用語をそのまま用いています。

 

 

 

 


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谷口 江里也
(たにぐち・えりや)
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詩人、ヴィジョンアーキテクト。言葉、視覚芸術、建築、音楽の、四つの表現空間を舞台に、多彩で複合的なクリエイティヴ・表現活動を自在 に繰り広げる現代のルネサンスマン。著書として『アトランティス・ ロック大陸』『鏡の向こうのつづれ織り』『空間構想事始』『ドレの神 曲』など。スペースワークスとして『東京銀座資生堂ビル』『LA ZONA Kawakasi Plaza』『レストランikra』などがある。
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