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■現代語訳『枕草子』
  ~清少納言の『枕草子』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳
更新日2015/08/13



枕草子  第十四回

その十  正月一日、三月三日は

正月一日、三月三日は、とてもうららかな日和だった。五月五日は、一日中曇りだった。七月七日は、ずっと曇りだったけれども、夕方になって空が晴れてきて、月がとても明るく輝いて、星もたくさん見えた。

九月九日は、夜遅くになってから雨が少し降った。菊の花にも水玉がたくさんついて、菊をおおった薄綿も、ぐっしょり濡れている。長寿を願って、その綿で、老いを拭いさろうとする際に、きっと、菊の花のうつり香も、いつもよりずっと、香り立つにちがいない。

雨は朝にはもう止んでいたけれども、それでも空はまだ曇り空で、いかにも、また雨が降ってきそうな気配を漂わせていたのは、とても風情があった。

 

その十一  官位を頂戴した方々が

官位を頂戴した方々が、帝にお礼の言葉を申し上げるようすは、見ていて、とっても美しい。

衣装の背中の方には、長い後垂れだれがついていて、それが床に長く尾を引き、そんなお姿で正面を向いてすっくと立って、そこから、帝にお辞儀をして退く時に、しきたりどおり、右足、そして左足と、まるで踊りを踊るかのように、さっと見事に向きを変える、その振舞いこそ美しい。

 

 

※文中の色文字清少納言が用いた用語をそのまま用いています。

 

 

 

 

 

 


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谷口 江里也
(たにぐち・えりや)
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詩人、ヴィジョンアーキテクト。言葉、視覚芸術、建築、音楽の、四つの表現空間を舞台に、多彩で複合的なクリエイティヴ・表現活動を自在 に繰り広げる現代のルネサンスマン。著書として『アトランティス・ ロック大陸』『鏡の向こうのつづれ織り』『空間構想事始』『ドレの神 曲』など。スペースワークスとして『東京銀座資生堂ビル』『LA ZONA Kawakasi Plaza』『レストランikra』などがある。
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