枕草子 第十四回
その十 正月一日、三月三日は
正月一日、三月三日は、とてもうららかな日和だった。五月五日は、一日中曇りだった。七月七日は、ずっと曇りだったけれども、夕方になって空が晴れてきて、月がとても明るく輝いて、星もたくさん見えた。
九月九日は、夜遅くになってから雨が少し降った。菊の花にも水玉がたくさんついて、菊をおおった薄綿も、ぐっしょり濡れている。長寿を願って、その綿で、老いを拭いさろうとする際に、きっと、菊の花のうつり香も、いつもよりずっと、香り立つにちがいない。
雨は朝にはもう止んでいたけれども、それでも空はまだ曇り空で、いかにも、また雨が降ってきそうな気配を漂わせていたのは、とても風情があった。
その十一 官位を頂戴した方々が
官位を頂戴した方々が、帝にお礼の言葉を申し上げるようすは、見ていて、とっても美しい。
衣装の背中の方には、長い後垂れだれがついていて、それが床に長く尾を引き、そんなお姿で正面を向いてすっくと立って、そこから、帝にお辞儀をして退く時に、しきたりどおり、右足、そして左足と、まるで踊りを踊るかのように、さっと見事に向きを変える、その振舞いこそ美しい。
※文中の色文字は清少納言が用いた用語をそのまま用いています。
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