のらり 大好評連載中   
 
■よりみち~編集後記
更新日2020/01/16




今年の正月はとても穏やかな天候だったが、異常気象は本格的になってきた感じもする。昨年末から北海道に雪が少なく、暖冬と呼ばれる年もあるが、これほど雪が降らない少ない年は記憶がない。2月の一番寒い時期に毎年開催されている「さっぽろ雪まつり」も雪集めに苦労しているようだ。スキー場も雪不足でオープンできないところもあるとかで、雪の北海道のイメージが変わってしまいそうだ。これも温暖化の影響なのだろうが、生活スタイルや食生活なども変わってくるのかもしれない。

アメリカもトランプ大統領の弾劾裁判と大統領再選が注目されており、米中経済対立、北朝鮮核廃絶交渉問題、イラン核開発問題など、大きな問題ばかりが目白押しで、今年は大きな変化が起こりそうな予感があったのだが、いきなりの大ニュースで正月気分に冷水をかけられた。1月3日、米軍無人機(ドローン)がバグダッド国際空港近くでイラン革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官と、イラクのイスラム教シーア派組織「カタイブ・ヒズボラ」のアルムハンディス隊長を殺害したのだ。場所がイラクの国際空港近くであり、ソレイマニ司令官が一般旅客機で通常入国した直後であり、トランプ大統領は議会の承認はもちろん、イラク政府にも同盟国にも相談なしに殺害の指示を下したことに、国内外から批判が巻き起こった。トランプ大統領はテロリストたちをテロ攻撃される前に排除できたことを自画自賛したが、各国からテロリストはトランプ大統領の方だと多くの批判が寄せられた。その殺害動機である「四つの大使館が攻撃されつつあった」としていたが、エスパー国防長官がイラク大使館以外は知らないと否定しており、政権内の不一致も言われており、トランプ大統領の独断で殺害が指示された可能性が高い。イラン政府は、司令官殺害に対する報復を宣言していたが、1月8日、報復として米軍基地に16発のミサイルが撃ち込んだが、一人も死者が出ておらず、犠牲者が出ると米軍によるイラン国内の政府機関への反撃がトランプ大統領から予告されていたので、報復は実行するが、冷静で大人の対応をして、直接的な戦争状態を望んでいないことをアピールした。

さらに、1月8日早朝、イランの首都テヘランのホメイニ国際空港を離陸したウクライナ航空の旅客機が7分後にミサイル攻撃され、乗員乗客176人全員死亡が確認された。当初、イラン政府は事故だと主張していたが、3日後の1月11日になって、イラン革命防衛隊(IRGC)のサラミ司令官がミサイルで誤射したものと認め謝罪した。この旅客機爆破事件は、イラン政府は事故だとしていたが、イラン革命防衛軍配下の過激派分子によるアメリカへの報復なのだろうと思っていたが、ミサイルの誤射だったとイラン政府が謝罪したことに驚きを隠せなかった。イラン政府とイラン革命防衛隊が必ずしも一体化していないことを自ら表明し、今後発生するであろう事件に牽制をかけ、イラン政府がアメリカとの戦争を望んでいないことを内外にアピールしたからである。しかしながら、このミサイル誤射を認めたことで、犠牲者にイラン人82人、カナダ人63人(ほぼ全員がイラン系カナダ人)が含まれていたため、イラン国民の怒りは激しく、追悼デモが拡大しており、反政府の動きも本格化しているようだ。イラン革命以来、イランのイスラム過激派勢力は根強く、反米意識も中東一過激でイスラエルとは犬猿の仲であり、一番警戒しているのはイスラエルだろう。今後発生するゲリラ的な反米、反イスラエルテロがとても心配で、直接のターゲットにはなっていない日本だが、中東地域では何時テロに巻き込まれるか分からない状態であることは間違いない。そんな状態の地域に海上自衛隊をどんな名目にしろ派遣するなどとんでもないことだ。犠牲者が出ないことを切に祈るばかりである。(越)


 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

このコラムの感想を書く



のらり編集部

著者にメールを送る


バックナンバー

■更新予定日:毎週木曜日