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■よりみち~編集後記

 

更新日2014/03/20


ウクライナの反政府運動がクリミア自治共和国のロシア併合へと急展開してしまった。ほんの2週間足らずでここまでの変化は誰も予想できなかっただろう。それにしても、ロシアのプーチン大統領の強気の構えには驚かされた。なりふり構わずと言ってもよいほどで、怖いものは何もないとでも言いたげだ。ロシアからすれば、元々クリミア半島はソ連の時代からの領土であり、ウクライナもソ連の植民地であり、ロシア人が支配していた国であり、住民もロシア人ばかりなのに、なぜウクライナの独立でロシアが言いなりになる必要があるのかという論理であり、ロシアの唯一凍らない軍港があるクリミア半島を死守して何が悪いということなのだろう。背景には、EUのロシアの天然ガスの依存度が高いことが大きいようだ。ロシアにへそを曲げられ、ガスを止められたらヨーロッパは成り立たなくなるという切実な問題があり、建前としてはアメリカや国連に歩調を合わせ、ロシアへの経済制裁を打ち出してはいるものの、裏では資源のストップだけは避けたい本音があるため、強硬姿勢を取れないのだ。アメリカにしても同じで、中央情報局(CIA)と国家安全保障局(NSA)の元職員、エドワード・スノーデンが1年間の条件付きとはいえロシアに滞在中ということで、アメリカの機密文書をわんさかと所持していると言われるだけに、ロシアをあまり刺激して、アメリカ政府の機密情報のリークやCIAの内部告発を恐れていることは間違いないだろう。

プーチン大統領の強気な言動などは、これらの切り札をすべて握っているからこそできるわけで、当初は、クリミア自治共和国での国民投票により、まずはウクライナからの独立国として承認させ、実質的には傀儡政権を樹立して、西側諸国を安心させ、自由にクリミア半島にロシア海軍基地を存続させるのではないかと思われていたが、いきなりのロシア併合宣言となり、文句あるなら受けてたつ構えに変わってしまった。EUもアメリカも国連でクリミアのロシア併合は国際法上認められないと、ロシアを徹底的に非難してはいるが、今後、どこまで経済制裁を打ち出せるかは疑問だ。ロシア高官の海外資産の凍結し、渡航禁止を表明しているが、ロシアとしてはたいして困った状況にはなっていないし、それが拡大されても痛くもかゆくもない状態で、経済制裁にすらなっていないと言われている。それよりも怖いのは、鎖国政策により、ロシアの反撃が旧ソ連邦諸国に対してクリミア自治共和国と同じようにロシア併合への工作をしてくることだろう。なにせどこの旧ソ連邦の国にもロシア人住人が相当数暮らしており、そのロシア人への抑圧を阻止するという大義名分の下、軍事介入してくる可能性が高いからだ。ここでロシアのプーチン大統領の強硬姿勢を止められるのは、結局のところ冷戦時代からの相手国アメリカしかないのだが、すでに昔のような国力も財力もなくなっているアメリカには、プーチン大統領をねじ伏せるだけのパワーは残っていないのが現実だろう。できることは中国とロシアが大接近して、東側諸国同士で同盟国的な関係とならないように中国に対して釘を刺し続けることだろう。中国の経済力と市場がロシアと手を組むことは、西側諸国としてはとても危険な状況となることは明らかであり、EUとしても、アメリカとしても、経済戦略的にも大敗北となる可能性が高いわけで、世界秩序の安定が図れるかどうか、このクリミア併合問題のソフトランディングにかかっているように思えてならない。 (越)

 

 

 


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