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■よりみち~編集後記

 

更新日2011/08/04


今回の大震災による福島原発事故は、第二の敗戦と例えられるほど、日本にとってダメージが大きく、様々な分野や業界に甚大な影響を与える大惨事となったが、4ヶ月以上が経過した今、政治の混乱による大震災の復興の遅れや原発のメルトダウンによる放射能汚染の拡散に対する後手ごての対応など、これが世界第二位の経済発展を成し遂げ、世界で唯一の被爆国である日本の放射能汚染に対する政府の対応なのかと唖然とするばかりの出来事が起こり続けている。もしもはない話だが、この大震災と原発事故がもしも隣国の韓国や中国で起こっていたとしたら、日本政府はどんな対応をしただろう。これを考えるとちょっと怖い日本が想像できる。日本の対応はたぶん尋常ではないはずだ。当然、放射能汚染を心配して隣国への渡航禁止令を発令するだろう。輸入は食料品から家具、衣類などに対して厳密な放射能検査と検査済み表示を義務付けるだろう。台風シーズンには、韓国や中国からの風向きを速報して放射能汚染注意報や警報まで出すかもしれない。まだ記憶に新しい狂牛病問題で、アメリカの輸入牛に対し、かたくなに全頭検査を義務付けたのは日本だ。それが日本に放射能汚染の問題が発生した現在、こうも態度を変えてよいのだろうかと思える日本政府の対応にちょっと驚かされる。当初は、全頭検査は計器が揃わないので困難との回答だったが、それに対して批判が出ると、急に全頭検査に切り替えという、お役所体質が丸見えである。
また、今でも納得がいかないのが、原発事故が発生していち早く、放射線許容量の基準値を引き上げたことだ。まるでマニュアルがあったように、突然、放射線許容量が年間1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに置き換えられたのだ。その理由は単純だ。1ミリシーベルトでは許容量を超える被爆者がべらぼうに多くなり対応しきれないと考えたからだ。原発の事故現場で働く作業員に対して、普段の放射線許容量ではなにも作業できないほど高濃度の放射線が充満しているから、特別に被曝線量を普段の2.5倍の年間250ミリシーベルトに引き上げたのは、緊急事態であり、止むを得ない苦渋の判断だと思うし、作業員の方々には頭が下がる思いだが、一般市民レベルでも1ミリから20倍の20ミリシーベルトに引き上げる便乗値上げのような対応は釈然としないものがある。それでは何のために年間1ミリシーベルトの基準値があったのか疑問が残るが、実際のところ、年間1ミリシーベルトでは、福島県には誰も住めなくなってしまいそうなほど汚染が蔓延している。
先日7月26日に国会に参考人として呼ばれ怒りの熱弁を繰り広げた児玉龍彦教授(東京大学先端科学技術研究センター教授 東京大学アイソトープ総合センター長)が怒っておられたことは、半径20Kmだとか今でも言っていることがナンセンスで、天候や風向きでマダラ状に線量が高い場所があるわけで、徹底的に測定して高い濃度の場所は除染したり、避難させたりするしかないのであり、なぜそれを国が今すぐやろうとしないのかということだった。子供を守るためにできる限りの努力を今すべきであり、何をやっているのかと恫喝していた。このような本物のお医者さん、科学者がいてくれたことに正直ホッとした。
ところで、「管降ろし」は誰かが糸を引いていないのだろうか? 最近、このことがちょっと気になり始めている。管降ろしが盛んに言われ、民主党内からも声高に言われ始めたのは浜岡原発の停止命令からではなかっただろうか? 管さんの本心は「脱原発」だろう。本当の気持ちは、スイスやドイツの首相のように、「○年後、日本の原発を廃止する」とぶち上げたいのだと思える。この管さんの性格を知っている原発推進派の議員たちが危機感を持っていて、とにかく脱原発宣言をする前に政権から引きずり降ろす必要があるのではないだろうか。
民主党が無能なトップばかりで、このような国難に対して的確に対応できるリーダーシップを持つ政治家がいないことは誰もが分かっていることで、管総理を引きずり降ろすのはいいが、その後は誰がリーダーになれるのかと言えば、結局のところ誰もいない。帯に短し襷に長し、どんぐりの背比べ的な中堅ばかりで、結局のところ、顔が怖くて迫力があり、言動が慎重で一応やる気もありそうな野田財務大臣あたりが次期総理となるのだろうが、今の管政権とどこが変わるかといえば、言動が慎重なだけで、あまり思いつきを口にしないだけで、復興支援の動きや新エネルギー問題が急激にスピードアップされることなど考えにくい。結局、自民党に戻さないと民主党ではこの国難を乗り越えることは困難という結論になることは明確なように思える。
最近、あまりにもやめない管さんに対して、ここまできて民主党にこれ以上やらせても駄目なことは見えているし、自民党に戻しても古い体質が残っていて、古狸を生き返らせることは避けたいし、いっそのこと、『脱原発解散』でもしてくれた方が明るい未来につながるのではないかという意見も本気で出てきている。管さん自身も、こんな民主党では誰が首相に替わってもうまく回りはしないことも分かっているだろうし、それでいて自民党に政権を返上することも絶対にしたくないとすれば、新エネルギーへの転換を踏み絵にした「脱原発」だけをテーマとした解散で、新しく政党を組織し直す超ウルトラCの選択があることも知っているはずだ。ここまで民主党からも自民党からも嫌われているのだから、日本の未来の電力社会の革命を起こすために、日本から原子力発電を廃止して、電力会社の独占体制を修正し、新エネルギー先進国になる宣言をして退陣するべきではないかと、最近私も思えてきた。このまま管政権が新政権に変わったところで、原子力発電は改革されるだけで、廃止されることはないだろう。すでに安価な電力を享受するには原子力しかないと洗脳され、この現状を維持していかないと原子力に依存している人々の生活が奪われ、さらなる失業問題や社会問題に発展するという論理が展開されるだけで、新エネルギーへの変革どころか、原子力発電のためのさらなる安全神話作りが再度始められのがいつもの流れだ。他の国はともかく、日本は世界最大の地震国であり、4大陸のプレートが地下で交錯する世界で最も危険な国なのだから、今回の東日本大震災と福島原発問題で原子力発電に対して廃止を決断すべきで、日本の未来には新エネルギーで主導権を握るしか可能性はないように思えるのだが、なぜそんな議論が巻き起こらないのか不思議だ。(

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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