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■よりみち〜編集後記

 

更新日2010/08/05


最近の密かなマイブームに「キューバ」がある。キューバ共和国は実にユニークな国だ。まず地図を見れば分ることだが、国交のないアメリカに非常に近いことに驚かされる。目と鼻の先と言ってもよいほどだ。それを証明するかのように、あの悪名高い「グァンタナモ収容所」はキューバ内にあるアメリカが1903年に永久租借したグアンタナモ軍事基地にある。社会主義国家キューバに、国交断絶したアメリカの軍事基地が堂々と存在しているわけで、イギリスのジブラルタルがスペイン南端にあるのとはわけが違い、国交のない国が占領しているのだ。1959年の革命政権樹立以来、フィデル・カストロが一貫して国家主席を維持し続け、2008年に国家評議会議長引退し、弟のラウル・カストロが引き継いではいるが、84歳の今でも影響力は絶大だ。一党独裁政権の権力者でカストロほど慕われ、愛され、支持され続けている独裁者が今までの歴史の中でいただろうか。もちろん社会主義国で、アメリカの経済封鎖が現在でも継続中のキューバは、経済的には非常に貧しく、キューバ人一人あたりの月収は約15ドルだという(アメリカ政府発表情報)から、西側諸国の感覚からすれば極貧国なのだが、国民は実に明るく屈託がない。これは中米特有のラテン気質もあるだろうが、経済的には貧しくとも、音楽やダンス、そしてスポーツを楽しみ、教育と医療が充実しているから、老後の不安も少なく精神的にはとても豊かな国である。特に、近年のベネズエラと中国の台頭と協力関係の拡大により、物資供給が安定化してきており、観光業の成功などにより、より不安材料が減ってきていることは事実だろう。1950年代の自家用車が今でも現役で使用されていて、食糧は今でも配給券がないと買えない生活のようだが、人々は今でもカストロを慕い続け、キューバの終わりのない社会主義運動に対して誇りを持って推し進めようとしている。どこかの国の独裁者が核兵器を切り札に使って経済援助を手に入れようとしたり、自分に都合のよい法律をでっち上げて私腹を肥やしたり、親族を重要ポストに登用してやりたい放題させるなど、独裁が続くと大抵の場合腐敗政治とつながっていくのだが、キューバだけは一貫して貧しいながらも国民主権で、平等主義を実践し、教育・社会福祉部門に対する投資率を拡大している(国家予算の16%に達している)。西側のライフスタイルに慣らされた頭では、美味いものを食べ、着たい洋服を買い、気に入ったモノや本を手に入れることが当たり前なのだから、物資が行き渡らないキューバが理想の国などとはとても評価できないし、貧しさに同情してしまうのだが、高額の医療費や老後の生活費におびえている我々の姿は、キューバの人々にとっては反対に同情の対象だろう。互いにないものねだりはきりがないのだが、キューバの社会主義がこれからの国々の未来に大いに参考となることは間違いなさそうだ。カストロ後の次の世代がどんな国づくりをするのか楽しみだ。
現在の社会主義国家キューバ共和国はフィデル・カストロとチェ・ゲバラの二人の英雄抜きでは語れない。この二人の革命家の貴重なドキュメンタリー映画作品を最近ビデオで観て感動した。今までの二人の虚像が少しだけ現実に近づいた感じがした。特に意外と知られていないのが南米ボリビアに散ったチェ・ゲバラの最期だと思う。私はゲバラは政府軍との戦闘で戦死したのだと思っていたのだが、公表されてはいないが完全に処刑されたことにショックを受けた。さらに彼の墓も骨も未だに不明だということも・・・。合掌。

「EL CHE」(伝説になった英雄)  モーリス・ダゴソン作品 1997年/フランス
http://www.alcine-terran.com/main/che.htm
革命家の象徴として崇めらるチェ・ゲバラの幼少時代からボリビアでの最期までを彼の親族や親友たちの証言と映像で綴るドキュメンタリー作品。革命家として生きたアルネスト・チェ・ゲバラの人間性や世界平和へ対する想いが鮮明に映し出されている。ボリビアの最後に彼を撃った男の証言の映像まである。

「Comandante」(コマンダンテ) オリバー・ストーン作品  2003年作品/スペイン
http://www.alcine-terran.com/comandante/
社会派映画監督として著名なオリバー・ストーン自身がインタビューアとなってキューバの指導者フィデル・カストロに取材したドキュメンタリー映画。各国の映画祭では好評を博したが、在米キューバ人の強い圧力によってアメリカ国内では公開されていない。

 

 

 


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