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■よりみち~編集後記

 

更新日2016/11/10

2016年11月8日、この日のことはアメリカ合衆国が歴史的な転換が始まった日として、全世界の人々に記憶されることになるだろう。アメリカ大統領選挙で共和党候補のドナルド・トランプが、アメリカ初の女性大統領を目指していた民主党候補のヒラリー・クリントンに大勝したその日である。1年前には共和党の泡沫候補と考えられ、右翼的な過激な言動や不法移民やシリア難民などを拒否する排外主義で注目され、「Make America Great Again!」を浸透させながらこれまでのアメリカの失敗を繰り返さない、古き良き時代のアメリカに戻ることを訴え続け、あれよあれよという間に、ライバル候補者を次々と破り共和党の最終候補にまでになってしまった。

政治経験なしの根っからの不動産ビジネスマンが大統領選挙に立候補すること自体、日本で言えば選挙の常連であるドクター中松のような存在だったはずだったが、トランプの強みはメディア操作が得意なことだった。自らTV番組の司会経験もあるほどメディアの世界を熟知しており、大統領候補がどんな挑発的なことを言えば注目され、TVニュースで露出されるのかをすでに知っていたのだ。トランプが「メキシコ国境に壁を作り、違法移民を撲滅する。その壁はメキシコに作らせる」と言えば、違法移民に白人の仕事が奪われていると危機感が煽られ、さらにメディアがこの過激な発言に注目し全米に露出され、ネットのSNSでさらに浸透していく。最初は過激な発言に驚くものの、政治家でこのような危険な発言をする者などいないから、弱者の気持ちの代弁者として徐々に人気を不動のものとしていったようだ。

表向きには下品で過激な発言ばかりのトランプに対して冷ややかな態度をとりながらも、改革が中途半端な民主党の現政権に対して、そしてその民主党の象徴的な存在となった「私はクッキーを家で焼くような女ではない」と公言する野心家のヒラリー・クリントンに対して、女性初の大統領として全く期待が持てないという、どちらも問題だらけの候補者の前で、選択肢はどちらがこの閉塞状態のアメリカの現実に変化をもたらしてくれるかということになったように思える。トランプは大統領にふさわしい人物ではないが、ヒラリーのようなベテラン政治家が大統領になっても決してアメリカは変えられない。ここで隠れトランプ支持者が出てきたのだ。表向きにはオバマの後継者を自認するヒラリー派だが、実は嫌いなトランプに投票して、アメリカの政治の流れにダメ出しをしたかったのだ。

小学校の先生からの悩みの相談として、“子供たちに新しいトランプ大統領についてどのように説明したらよいのか?”というものがあるそうだ。排外主義、不法移民の追い出し、中東難民の拒否、白人至上主義などなど、学校で教える人道主義、民主主義の教えと正反対の新大統領が誕生したと説明してもよいのだろうか? カナダへの移住を考える人も多いというのもうなずける。トランプ・ショックがどれだけアメリカに影響を及ぼすのか誰もが半信半疑の状態だろう。日本にも相当影響があると恐れられているが、イギリスのEU離脱の是非を問う国民投票がまさかの否決となったように、もはや後戻りできない選択をアメリカもしてしまったわけで、とにかく前に進めるしか方法はない。このトランプ現象が世界中に大きな新しい潮流をつくることは確実で、少なくとも世界は分断の方向へ舵を切りつつあるのだが、ISやナチスのような極右的な国家がこれ以上台頭しないことを切に望む。(越)

 

 

 


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