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■よりみち~編集後記

 

更新日2018/11/29




日本の企業売上ランキングで第4位の大手自動車メーカー、日産自動車(株)のトップであるカルロス・ゴーン代表取締役会長とグレゴリー・ケリー代表取締役が、2018年11月19日夕方、羽田空港でビジネスジェット機で到着した直後、東京地検特捜部により金融商品取引法違反容疑(有価証券報告書虚偽記載)で逮捕されたニュースは、久々に日本中に大きな衝撃を与えた。フランスのルノー、三菱自動車工業と三社で企業連合を形成し、2017年の販売台数では約1,061万台と世界首位となった世界的な大企業のトップとナンバー2が同時に逮捕され拘置所に送られたのだ。日本企業の社長が地検特捜部に突然逮捕されたのはライブドア時代のホリエモンこと堀江貴文氏くらいしか記憶がなく、ましてやフランスの代表企業でもあるルノーの会長でもあるゴーン氏を日本の検察庁が突然逮捕したわけで、前代未聞のことだ。余程、余罪も含めて確信的な動かぬ証拠を掴み、証人も確保しているからここまでの暴挙に及んだのだろうと推測したのだが、逮捕から1週間以上が経過して、どうもその雲行が怪しくなってきているのだ。直接的な逮捕理由となっている有価証券報告書虚偽記載だが、当初は、ゴーン氏の5年間の役員報酬を50億円分少なくなるよう有価証券報告書に虚偽の記載をしていたものと思っていたが、その報酬がゴーン氏の退任後に支払われる予定の金額であり、あくまでも後払いで受領していない将来予約された報酬だと分かってきたのだ。確かに、将来的に報酬が確定して契約書などがあれば開示義務があるとのことで、その契約がありながら開示していなかったら虚偽記載になるという論理は理解できるのだが、実際に手にしていない報酬に対して逮捕までして罪を問うことができるのだろうかというのが素朴な疑問である。ケリー氏はこの点も金融庁に確認済みで、記載の必要がないことは確認済みだと主張しているようだ。この逮捕劇はあくまでも形式的な手続きで、日産が会社としてゴーン前会長個人を特別背任容疑で立件するためだとする見方もあるようだが、海外での不動産購入や私的流用などが間違いなくあったとしても、それを会社の財産上の損害として立証するのはかなり困難だと言われており、どこまで事前に特捜部と日産側で検討されていたのか、決定的な証拠が存在するのか疑問がある。

フランス政府が16%の株式を所有する国家的な自動車メーカーであるルノー、そのCEOでもあるゴーン氏の存在は、日産にとっても相当重要な存在だったはずだ。1993年3月の日産の経営危機の際、ルノーとの資本提携(6,430億円出資)により日産はまさに生き返ったわけで、当時のルノーの副社長だったゴーン氏が最高経営責任者に就任し、「日産リバイバルプラン (NRP)」のもとに大リストラを断行してV字回復できたから今の日産の繁栄があり、ゴーン氏を日産復活の立役者であることを否定できる人は誰もいないはずで、新生日産のまさに顔だった。2005年4月からはルノーの取締役会長兼CEOとなり、世界的に業績を拡大し、ルノーとの部品共有化も70%まで推進、2016年4月に発覚した燃費偽装問題で低迷していた三菱自動車の株式の34%を取得して日産が筆頭株主となり、再建支援を表明した。ここにルノー・日産・三菱アライアンスが誕生したわけで、ゴーン氏が各社の取締役会長に就任し、世界一の販売台数を誇る自動車メーカーグループとなったわけである。
それがここに来て、フランスのマクロン大統領からルノーに対して、以前からも再三要望が出されていた日産の完全子会社化についての決断を迫る発言があったことがメディアの取材などで指摘されており、それまではゴーン氏がフランス政府の経営介入を嫌って拒否し続けてきたが、ついにゴーン氏のルノーCEOの任期延長の条件とされ、本年末までに解決することで会長職に残留する約束が確認されたようで、今回のゴーン氏とケリー氏の逮捕劇は、まさにルノーが日産を完全子会社化することを阻止するために仕掛けられた日産の社内クーデターに見えてしまうのは当然のことだ。それも、東京地検特捜部が動いているということは、官邸までもがその指示に係わっていたことは間違いなく、日産本社の幹部が日本政府と連係して、司法取引を名目に、ゴーン氏とケリー氏の二人を役員から追放して、ルノー寄りの流れを止めることにあったと考えるのが普通のことだろう。
ルノーによる日産の完全子会社化はゴーン氏及びケリー氏の特別背任により会社に不利益を与えたことで役員の解任決議がされ、しばらくは止まるだろうが、ゴーン氏もケリー氏も有価証券報告書虚偽記載については無罪を主張し続け、さらに日産を相手取り名誉棄損などで反撃してくることは明らかだろう。さらにフランス政府及びルノーは、日産に対してのガバメントをより強く要求してくることも確実で、日産の幹部が理想と考えている日本人トップによるガバメント体制はとても困難なことだろう。ルノーの切り札は、中国政府への株式全部の売却だ。中国ならば相当な高値を付けて買い取ることは見えているし、そうなったらもはや日産は日本企業ではなくなることは明らかだ。反対に日産側の切り札があるとすれば、ルノー株の買い増しで、現在の15%を25%までに増やすことで、ルノーが持つ43.4%の日産株の議決権が消滅するようにすることだが、実際にそれをやった時点で、ルノーと日産の連合体は終局を迎えると言われている。その前の段階で、ルノーと日産が話し合い、どこで折り合いをつけることができるかが勝負になりそうだ。すでにルノーでは、ゴーン氏の後釜の用意がされているようで、ポストゴーン氏が日産幹部とまともな会話が成り立つのか、日産幹部の吊るし上げが始まるのか、まだまだどちらに転ぶのかさえさっぱり先が見えてこない状態である。フランス政府が日本人を本当に理解できるのか、また理解しょうとしているのかが、今回の日産桜田門の変で分かりそうだ。

それにつけても、とにかく気の毒なのは、会社の都合だけで右往左往させられ、リストラの嵐を乗り切って一生懸命頑張ってきた日産の社員たち、そして工場で製造を担当している関連会社を含めた労働者たちだ。トップが報酬を80億円どうしたこうしたなど全く関係のない別世界の出来事であり、一番しわ寄せを喰らうのは、常に会社の底辺で頑張っている労働者なのだ…。(越)

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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