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■よりみち~編集後記

 

更新日2010/12/25


月日の経つのは早い。年齢を重ねるとさらにその経過のスピードは加速すると言われているが、まさに実感としてそれを感じる。日本という国も老年期を迎えているのかもしれない。高度成長時代を迎え、やることなすこと世界の注目を浴びて、国民性の優位点を強調され、勤勉の国、教育水準の高い国、技術大国、スモール・イズ・ビューティフル、トヨタ方式などがお手本にされた時代がついこの前まで進行しているかに思えていたのだが、バブル経済に浮かれ、その後の清算の遅れや無為の時代をすごすうちに、いつの間にかあっという間に韓国や中国にほとんどすべての分野で遅れをとる国になってしまったようだ。政治も三流、経済も低迷、ゆとり教育も結局は、夢を持てないオタクや引きこもりを増やしただけなのかもしれない。
昔がすべてよかったなどという懐古趣味は持たないが、最近の子供たちの傾向を見聞きすると暗澹たる思いになってくる。特に驚くのは、留学生が減少傾向にあり、それも半減しているという現象だ。これはなにも学生だけの問題ではないだろう。留学するメリットを感じない社会になっているからなのだ。企業が留学経験者や野心を持った勉学心の旺盛な若者を探していないし優遇もしていないことは確かだろう。アメリカに留学するだけで箔がつき一目置かれた時代は過ぎ去り、かえってアメリカ流の教育を受けて戻ってくると職場に不協和音を起こすとさえ言われ敬遠された時代もあったことも事実だろう。しかし、留学という偉大なる好奇心と勉学心、向上心を胸いっぱいに抱えて祖国を飛び出していく学生が少なくなったということは、海外で得るものがなくなったからとはとても思えない。井の中の蛙大海を知らずはどんな時代になっても生きている真理だと思える。日本という国が、世界からみると豆粒のような国であり、そんな国が世界とどんな関係にあるのか、どんな動きをしなければならないか、それは井の中からの発想では解決法は決して見えないはずで、日本という国をより理解する意味でも海外で学ぶことは意味深いし、決してマイナスとなる要素はないはずだ。
その昔は、学生の多くが経済的な余裕さえあれば留学したいと思っていた。時代が違うと言われればそれまでだが、情報が今のように豊富でなく、インターネットもなく、国際ニュースも少なく、未知の領域が多かった時代だから、好奇心も満たされていなかったことは確かで、どんな国か知りたいから行きたい、それが観たくて行きたいという欲求が強かったことも事実だ。現在のように情報が満ち溢れ、どこの国でもライブカメラで覗くことができ、世界中の出来事や場所も自宅のベッドの上で確認することすら容易な時代になったのだが、その気になることはできても体感はできないのだ。「気分」の時代といわれるのがその証拠だろう。映画を観てすべてが分った気分になるのと似ているが、戦場の映画を観て、そのリアルな現場の気持ちを体感はできないはずだ。沸き立つ怒りや恐怖の感覚は現場で自ら体感した者にしか理解できないものであり、その体験を通して人は学習し、記憶が知恵となり、その人を成長させるものだと思うのだ。観た気になって、分った気になっても、その人の血や肉にならないから、薄っぺらな感情表現しかできず、本物や本質を見抜けない人を作り出しているのではないかと思える。これは極論すぎるだろうが、今の若者の本物志向のなさに危機感を感じる。
日本の教育を正常化させるためには、日本にはない兵役の代わりとして、国家予算で高校生に最低1ヶ月の海外研修を義務付けてはどうだろう。全く意味のない子供手当てなどやめて、親の干渉の一切無い、すべて自己責任を条件として、提携した教育機関の受け入れだけは確保してあげて、あとはすべて自分が独力で行動する教育訓練を課すわけだ。親離れ、自立心を養い、行動力の喚起、達成感の実現、トラブルの対処法など、どれだけ人間的な成長がリアルに身につくか計り知れないだろう。これこそが教育のようにも思える。そんな頭の柔らかい文部科学大臣が出てこないかと思うのだが、お家騒動で頭がどうかしてしまった今の民主党ではあり得ない話で、せめてどこかの私学のユニークな高校で実験的にでも始めてもらえないだろうか……。

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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