■フロンティア時代のアンチヒーローたち 〜西部アウトロー列伝



佐野 草介
(さの そうすけ)



海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

■貿易風の吹く島から
〜カリブ海のヨットマンからの電子メール
[全157回]




第1回〜第50回までのバックナンバー

第51回:Butch Cassidy_キャスル・ゲイト その2
第52回:一つの鮮やかな成功は常にモノマネザルを呼ぶ
第53回:ミーカー銀行強盗の怪
第54回:マッカテ ィー一族 その1
第55回:マッカティー一族 その2
第56回:マッカティー一族 その3
第57回:マッカティー一族 その4
第58回:ブッチのエピソード その1
第59回:ブッチのエピソード その2


■更新予定日:毎週木曜日

第60回:The Sundance Kid (サンダンス・キッズ)その1

更新日2007/12/13


ブッチと共に南米まで行き、ブッチの晩年にはなくてはならない存在になるサンダンス・キッズは、1867年ペンシルバニア州にバプテストの子として生まれた。ブッチより一歳若い。本名はハーリー・アロンソ・ロンガボー(Harry Alonzo Longabaugh)という。


サンダンス・キッズ(Harry Alonso Longabaugh)
キッズ4歳の時、父親のジョシュアとペンシルバニアで撮ったもの。

ロンガボー家の伝承や写真を見ると、慎ましいがブッチの家のように赤貧洗う開拓民の貧しさではなかったようだ。それでも13歳のとき、キッズは10マイル離れたラールストン家に召使として、奉公に出されている。正規の教育こそ受けなかったが、キッズは子供の頃から本が好きで、地元の図書クラブのメンバーになっている。利発で冒険にあこがれるありきたりの少年だったようだ。そのまま東部に居れば小さな商売で成功した…と思わせるものがある。しかし、少しでも野心のある東部の少年、青年は、皆西部に憧れ、顔を西に向け、西に行くチャンスを待ち受けていた。

そのチャンスは、早くも15歳の時に訪れた。イリノイに住んでいた従弟のジョージが妻メリーとまだ幼い子供二人を連れて、南コロラドのデュランゴへ移住するに飛びついたのだ。1882年のことだ。

デュランゴは、サンフアン連山の南裾にある地味豊かなところだ。1880年に鉄道が敷かれ、2年間で人口が2,000人を超すほど急激に増え、当時"西コロラドのデンバー"とまで呼ばれたのブームタウンだった。現在、州立大学の分校があり、西部開拓時代の面影を深く残す観光地になっている。デュランゴからシルバートンまで狭い峡谷の絶壁にすがり付くように、くねくねと2両、3両機関車を連結して上る侠軌道蒸気機関車の旅はアメリカ西部のハイライトになっている。

キッズの従弟一家4人とキッズは、デュランゴの北はずれに小さな牧場を構えた。アニマス川がゆるやかな谷を作っている、絵のように美しいところだ。どういう理由からか、想像するだけだが、恐らく、需要がうなぎのぼりで、高く売れる馬牧場を開くために広い土地を求めたのだろう、たった2年でこの地を捨てコルテスに移住している。

コルテスは、デュランゴの真西50マイルに広がる大地の中央にある。インディアンの時代から盛んに耕作が行われた土地柄で、北米最大クラスのインディアン洞穴遺跡があるメッサ・ヴェルデ丘陵地帯の麓に位置する。

東部育ちのキッズが本物のカウボーイになったのは、このコルテス時代の鍛錬の結果だろう。本来キッズは抜群の運動神経と反射神経、それにバランス感覚を持っており、今ならロデオのスターにでもなれたことだろう。

放し飼いにしている牛を駆り集め、まだ焼印を押していない子牛を投げ縄で捕らえ、即馬から飛び降りて子牛の首に喰らい付き、引き倒し両足を縛りあげる作業は若いカーボーイの仕事だった。それはかなり危険な仕事だが、それ以上に、野生の荒馬、ブロンコを乗りこなし、鞍を置かせる(ブレイクという)仕事は何倍も危険な、生傷、骨折の絶えない作業だった。キッズはブレイクを巧にこなす一流のカウボーイに育っていった。

時を同じくして、トム・マッカティーがコルテス近郊に牧場を持っていたので、この時期にブッチとキッズは出会った…のではないかと言われている。可能性は大いにあるが想像の域を出ない。この二人の劇的な出会いがあればハリウッドも映画を作りやすくなるだろうが…。

キッズの甥っ子の息子の嫁さん、かなり縁遠くなる上、直接血の繋がりがないので親近感に欠けるが、そのキッズの甥の息子の嫁さんのドナ(Donna B.Ernest)が『Sundance, My Uncle』、そして、『Sundance, Missing years』という本を書いた。

彼女自身、サンダンス・キッズの足跡を追い、膨大な距離を旅し、キッズがアルゼンチンから家族へ書いた手紙、キッズの家系などを網羅した"サンダンス・キッズ 決定版"を書き上げたのだ。

専門家、歴史家でもない一女性が膨大な時間を費やして、このような調査をしたことは感動的ですらある。西部の歴史、特にアウトローの調査にはこのような優れたアマチュア、町の歴史家が生涯を賭けるように行ったものが多い。このアウトロー列伝のサンダンス・キッズの項はドナの著書に依るところが大きい。

ドナによれば、ブッチとキッズはコルテス時代に出会っただけでなく、キッズがテリュライドのサンミゲル銀行強盗にも加わっていた可能性が大いにあるとしている。キッズが居た牧場と、トム・マッカティーが作戦本部にし、ブッチ、マットが出入りしていた牧場は10マイル前後しか離れておらず、西部の感覚では10マイルはお隣さんであり、金銀鉱山のブームで沸くテリュライドへキッズは馬を売りに何度か行っており、テリュライドの街も、逃走経路となったサンミゲルの山々も熟知してる…と言うのだが、いずれにせよ状況証拠の域を出ない。状況証拠をいくら重ねても一つの事実にはならないのだが。

-つづく

 

 

第61回:サンダンス・キッズ_その2


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