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■西部夜話~酒場サルーンと女性たち

第23回:酒場サルーンと女性たち その23

更新日2026/01/15


■デッドウッドの金髪の女王、モーリー・ジョンソン

西部史を語る上で欠かすことができない無法の町、デッドウッドには、最盛期に2万5,000人からの人が住んでいた。極言すれば、その90%は一攫千金を夢見る男どもだったと言って良いだろう。一体何軒のサルーン・バーがあり、明確に娼婦の館と銘打った娼館が何軒あったのか正確な統計はない。と言うのは、開店創業し、その2、3ヵ月後に潰れたり、火災にあったりで、ともかく目まぐるしく変わっていたからだ。

このようなブームタウンは流動性が激しく、ましてやインディアン居留地内にあるデッドウッドにあっては、法的規制もないに等しく、力すなわち暴力と金だけがすべてだった。全くの想像だが、サルーン・バーは20軒、娼館も10軒は下らなかっただろう。
 
ここに登場するモーリー・ジョンソンは、前回書いたドーラのライバルだった。ドーラの方は娼婦上がりとはいえ、もっぱら娼館のマダムとして綺麗どころの娘たちを上手に使ったのに対し、モーリーは最後まで自身も娼婦として通していたようだ。もちろん、自分の娼館を構えてはいたが…。共にデッドウッドにこの人ありと噂され、書かれた人物であることに相違はない。この二人が相当のライバル意識を持っていたことは明らかだが、二人が鉢合わせをした記録はない。

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モーリー・ジョンソンの唯一の肖像写真

モーリーは絶世の美女だった、それよりも何よりも表情豊かなチャーミングな女性だったし、大変な床上手だった、と評価されている。モーリーは娼館のマダムとしてよりも、彼女個人の魅力についての評判が多く書き残されている。

彼女がアラバマ州で育ったことは分かっているのだが、例によってどこでどのように育ったかは好き者の西部史家たちでも明確な答えを出していない。多少はっきりしているのは、モーリーが15、16歳の時から売春を始め、そのウマミを心得ていたことだ。

アラバマ州では広大なコットンフィールドの大農園主だけが娼婦を相手にできる金を持ってはいただろうが、あとは赤貧洗う貧乏人ばかりだった。そこへ行くと、西部の辺境でゴールドラッシュに沸く鉱山町は、小金を掴んだ、性に飢えた男どもがゴッソリいて、濡れてに粟で稼げるのだ。何も南部で燻っていることはない、若者よ西部を目指せ、娼婦たちよ鉱山町へ行け、とそのブームに乗ったのだった。
 
だが、女一人で辺境へ旅するのは危険が伴った。モーリーは恐らくアラバマで顧客になっていたルー・スペンサーというコメディアン、芸人と一緒に、ルーがデッドウッドのベラ・ユニオン劇場で公演するのに便乗したと思われる。モーリーとルーは自称、結婚している夫婦ということになっている。
 
ところが、コメディアンのルーは黒人だった。南北戦争後、奴隷は解放されたとは言え、黒人に対する偏見が根強く残っている南部で白人女性と黒人のカップルは不可能に近い組み合わせだった。そこへ行くと、西部辺境では事情が違った。娼婦も黒人も、何よりもまず人間として見られていた。
 
モーリーとルーの結婚は便宜的なものではなかったか、と想像している。と言うのは、二人がデッドウッドに居座ってから、モーリーは水を得た魚のように派手派手しく娼婦業に励んでいるし、ルーはすぐにデッドウッドを離れデンバーでの公演に向かっている。しかも、そこで彼のもう一人の妻(ルーは重婚していたことになる)を射殺した罪で逮捕され、裁判にかけられているのだ。

モーリーとルーは白人娼婦と黒人の芸人の、白黒の壁を乗り越えた大恋愛とダイム小説、映画に描かれているのとは全く違った事実、台所の事情があったのだ。
 
モーリーがデッドウッドにルーとやってきたのは、ルーの公演の記録から1878年の2月だと思われる。彼女自身が娼館を構え、数人の選び抜いた綺麗どころを集めるのは早かった。文字通りアッと言う間にモーリー自身、そしてモーリーの娼館は大評判になり、西部に知れ渡った。

モーリーがすべての人に対し非常に優しく、思いやりがあったことは、多くの人によって書き残されている。娼館のマダムになるにはそれなりに太っ腹であり、不幸な人、自分の下で客を取る不幸な娘たちへの篤い同情心を持っていなければならない。モーリーが、アイルランドの大飢饉へ大金を送っていたことはよく知られている。

また、1879年9月26日にデッドウッドを襲った大火災の時、焼け死んだ娼婦の一人を丁寧に埋葬し、町の人に深い感銘を与えている。
 
モーリーの娼館は(焼ける前の写真を探したが、どうにも見つけることができなかった)シャーマン通りとリー通りの交差点にあったが全焼し、その後、いち早く再建している。それは彼女自身のためというより、手元に置いている娘らのためだった。

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モーリー・ジョンソンの娼家だと言われているのだが、全く確証はない

その後2回大火があり、市政を敷いていない無法の町に消防システムもなく、あるのはボランティアの消防隊だけだったから、常に大火災に発展した。

1880年代に入ると一時期狂ったように沸いたゴールドラッシュが終わりに近づき、モーリーは1883年の初めにデッドウッドを去っている。彼女が何処に行ったのか、晩年を何処で過ごしたのはか誰も知らない。ルーともう一度寄りを戻した、会った記録もない。
 
モーリーは5年に満たない期間、デッドウッドに咲いたアダッ花だった。



モーリー・ジョンソンと信じられている絵

-…つづく

 


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佐野 草介
(さの そうすけ)
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海から陸(おか)にあがり、コロラドロッキーも山間の田舎町に移り棲み、中西部をキャンプしながら山に登り、歩き回る生活をしています。

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