第三十一回
風姿花伝 その四
神儀ということについて
申楽の始り その五
一、現在、南都興福寺の維摩會(ゆいまえ)において、講堂で仏へのお務めである法味を行う際、食堂で法会の余興として舞延年が行われる。これは誤った考えや災いである外道を和(やわら)げ、魔縁を静めるためである。その時、食堂の前で、お経を授けていただくが、それはかの祇園精舎の古き良き例に倣ったものである。
大和國春日の興福寺では、二月二日、と五日に宮寺において、四つの座の申楽を奉納する神事が行われるが、これはすなわち、一年の御神事初めの行いであり、天下太平を願っての、御祈祷(ごきとう)にほかならない。
なお、四座として
一、大和國春日御神事に相随(あいしたが)う申楽の四座
外山(とび)、結崎(ゆうざき)、坂戸(さかど)、園満井(えんまんい)
一、江州日吉御神事に相随あいしたがう申楽の三座
山階(やましな)、下坂(しもさか)、比叡(ひえ)
一、伊勢の主司(しゅし) 二座に、今主司 一座
一、法勝寺御修正参勤申楽三座
新座、本座、法成寺
この三座は
同じく、賀茂、住吉の御神事にも相随(あいしたが)う。
第三十二回
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