第十二回
風姿花伝 その二
物學(ものまね)のいろいろ
直面(ひためん)
これもまた大事である。そもそも直面(ひためん)は俗人のまねであるわけだから、簡単だと思うかもしれないが、しかし不思議なことに、能の位が上がらなければ、直面(ひためん)というものは見られたものではない。
もちろん俗人といってもいろいろあるので、演目ごとの対象についてよく学ぶほかはない。顔色や顔の表情などの面色(めんしょく)を似せなくてはいけないのはもちろんだけれども、直面(ひためん)では、普段の素顔の顔とは違う、顔の気色(けしき)をつくり出す必要があり、そうしなければ見られたものではない。
先ず第一に、振舞とか、風情などをその者に似せる必要があり、それに加えて顔の気色などを、いかにもいかにもそれらしく、自分なりのやり方で、わざとらしくなく、自然に自分の身についたもののようにしなければならない。
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