第十四回
風姿花伝 その二
物學(ものまね)のいろいろ
法師
これは、物まねの題材の一つではあるけれども、滅多に演じるものでもないので、それほど稽古を積む必要はない。おおよそのところを言えば、荘厳に着飾った僧正や、お寺の経営や運営の全般を仕切る位の高い僧侶などは、なによりもまず威厳が基本であって、そのような人々の気高さを学ばなくてはいけない。それより位の低い、一般の僧である法体(ほったい)や、出家して仏門に入った遁世(とんせい)、また修行僧などは、基本的に煩悩を振り払おうとしている人々だということを考え、仏教の修業に努めるようすや、そのことに思いを寄せる風情を表すことが肝要である。ただしそういう基本的なことに気をつければ良いとはいっても、演目によっては意外に思ったより多くの手数を必要とするものもあるということを心得ておく必要がある。
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