第十八回
風姿花伝 その二
物學(ものまね)のいろいろ
唐事(からごと)
これはちょっと特別なものであるので、こうでなければならないと定めて稽古をすべき基本的な形(かた)のようなものが特にはないが、ただ、その物まねを、どのような扮装で演るかということが大切である。また面をつける場合、唐人も同じ人間とはいうものの、やはり異国の人の物まねなのだから、一風変わった面をつけたり、衣裳を着けたりして、風體(ふうてい)そのものに、一見してふつうとは違った異国の風情を持たせるべきである。またこれは、年期の入った為手がやったほうが似合うけれども、それでも、出立(いでたち)を唐様(からよう)にしなければ、上手く演じる手立(てだ)てがない。
ただ、音曲にしても、演じ方にしても、単に、実際の唐人に似せたところで面白くも何ともないので、要は、どことなく唐風の風情があればよく、そうなるよう心がけるしかない。
しかしよく考えてみると、この唐事のように、異様なことを演ずるというのは、そうしばしばあることではないので、それほど重要ではないかといえば、実はこうしたことは、諸々のことに通じることでもあるので、よく考えて工夫しなければならない。また物まねにおいては、基本的に異様な感じになってはいけな
いけれども、この唐事では、いつもとは異る扮装や振舞をして、なんとなく唐風だなと人に思わすことが出来ればそれでよい。
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