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■現代語訳『風姿花伝』
  ~世阿弥の『風姿花伝』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳
更新日2010/06/24



第二十回
風姿花伝 その三
問答集 その二
序破急とは

 
問 序破急という概念がありますが、それはどのような定めだと考えれば良いでしょうか。

答 これは簡単な定めであって、序破急というのは、どんなものにもあり、申楽にとってもそれは同じである。

 能の場合は、まずは音曲を、この決まり事によって定めると良い。まず、最初の演目である脇の申楽では、とにもかくにも、正統的で定評のあるちゃんとした演目を、しっとりと上品に行うことが必要だが、そうはいっても、あまり神経質に細(こま)かにやるのではなく、音曲にしても、動作にしても、奇をてらわず、なめらかで自然な感じに行うのが良い。

 大切なのは、申楽はもともとが祝い事であるので、最初の演目では、どんなに良い能であっても、祝賀の意味を込めた祝言が入れ込まれていなければ意味がなく、本来の意に叶うものになるわけがない。たとえ能としては最高のものではなくても、祝賀の意を込めたものであれば見苦しくはないが。これはつまり序だからである。

 二番、三番では、得意な演目を上手に演じるべきであり、さらに進んで、いよいよ急になれば、曲も速く、動きを激しく動作も派手にすると良い。

 また、舞台が二日にわたって行われる場合は、二日目には、昨日とはちがう演目を脇に持ってくるべきであり、泣き申楽などは、二日目のなかほどに、良く考え、ちょうどよい時分に行うと良い。

 

 

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谷口 江里也
(たにぐち・えりや)
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詩人、ヴィジョンアーキテクト。言葉、視覚芸術、建築、音楽の、四つ の表現空間を舞台に、多彩で複合的なクリエイティヴ・表現活動を自在 に繰り広げる現代のルネサンスマン。著書として『アトランティス・ ロック大陸』『鏡の向こうのつづれ織り』『空間構想事始』『ドレの神 曲』など。スペースワークスとして『東京銀座資生堂ビル』『LA ZONA Kawakasi Plaza』『レストランikra』などがある。
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