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■現代語訳『風姿花伝』
  ~世阿弥の『風姿花伝』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳
更新日2010/10/07



第二十八回
風姿花伝 その四
神儀ということについて 
申楽の始り その二

 

一、むかし佛在所、すなわちお釈迦がおられた国で、須達長者(すだつちょうじゃ)が(祇園精舎)ぎおんしょうじゃを建てて、その供養を行った時、そこで釈迦如来(しゃかにょらい)が説法をされたが、そのとき、提婆達多(だいばだった)が一万人の、仏の教えを信奉しない異教の者たちを連れて来て、木の枝や、笹の葉に幣(しで)をくくりつけ、踊り騒いだので、ご供養の言葉を宣べることができなかった。

そこで仏陀は、お釈迦様の十人の弟子の一人である舎利弗達多(しゃりほつだった)に目を留め、仏の力をお授けになった。そこで舎利弗は、御後戸(おんうしろど)に、鼓や笙鼓(しょうご)を用意させて、同じく十大弟子の一人である阿難陀(あなんだが)才覚を働かせ、舎利弗が知恵を、さらに十大弟子の一人で弁舌に長けた富樓那(ふるなが)言葉を用いて、六十六番の物まねをしたところ、異教の者たちは、笛や太鼓の音を聞こうと御後戸に集まり、これを観て静かになった。その間に、お釈迦様が供養を宣べられたのだった。申楽は、この天竺での出来事から始まるともいわれている。

 

 

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谷口 江里也
(たにぐち・えりや)
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詩人、ヴィジョンアーキテクト。言葉、視覚芸術、建築、音楽の、四つ の表現空間を舞台に、多彩で複合的なクリエイティヴ・表現活動を自在 に繰り広げる現代のルネサンスマン。著書として『アトランティス・ ロック大陸』『鏡の向こうのつづれ織り』『空間構想事始』『ドレの神 曲』など。スペースワークスとして『東京銀座資生堂ビル』『LA ZONA Kawakasi Plaza』『レストランikra』などがある。
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