第75回:日本語はどこへ行ってしまうの?
更新日2008/08/28
北海道の小さな大学で夏期講座を受け持ち、またまた日本にいってきました。指折り数えてみるとこの1年間に5回も行っていることになり、日本に住んでアメリカに行く方が便利なのではないかと思えるくらいです。
日本で教える楽しみは、大好きな食べ物は別にしても、私が教える以上に学ぶことが沢山あることです。かなり化石化したウチのダンナサンの日本語ではなく、若い学生さんたちの生の日本語に接することができるのも大きな魅力です。
新しい外来語が多くなり、新聞や雑誌で外来語やカタカナのないページを見つけるのはミッション・インポッシブルになってきたのは驚きでした。その中にはすでに日本語化した使われ方をしている外来語もありますが、新聞の経済欄では、英語圏の人でも言葉の定義も意味も知らないような英語をそのままカタカナに置き換えて日本語の文章に織り交ぜている文章がとても多くなってきてるようです。。
・ストレス:もう日本語化した外来語になっていますが、"強調する"とか"重点をおく"という意味の方は忘れられているようです。
・ウェッブ、サイト、インターネット、ログイン、アクセス、ブログ:一体日本語でどう呼べばよいのか分らないくらいです。
・リクリエーション、レジャー:92歳になる私のお姑さんでも知っている定着した外来語でしょうね。
・リサイクル:リサイクルショップというのと、古道具屋さんと呼ぶのとではお客さんの入りが違うのかしら。私には古道具屋さんのほうが、薄暗い狭い店のなかに積み上げられた掘り出し物あるような気がします。
・ スタッフ:英語流に言えばスタッフメンバーで社員や構成員のことになりますが、スタッフだけですとモノを指すのが普通です。日本語化した外来語でしょうね。
・ スカウト、リクルート、ドラフト・・・と、ここまでは一般によく目にしますが、以下のカタカナ語のうち、幾つ正しい意味がお分りでしょうか? そして幾つご自分で実際に使ったことがあるでしょうか?
1. コラボレーション collaboration
共同作業、協力、合作、協賛
2. エンフォースメント enforcement 法務執行
3. コンソーシャム consortium 共同企業体
4. コンスピラシイ conspiracy 共謀、陰謀、
5. メセナ ドイツ語からのカタカナ語でしょうか、文化用語活動
6. エンパワーメント empowerment
権限付与
7. タスクフォース taskforce 特別作業班、機動部隊
8. スタグフレーション stagflation 失業率が高くなり消費購買力が落ち、経済成長率がマイナスになるインフレーション
9. サブプライム sub prime 2級品
10. ディクライニング・ディケイド declining decade 凋落の10年
11. グローバリゼイション globalization 全地球的 全世界的
12. プライマリーバランス primary balance 基礎的財政収支
13. アンチエイジ anti aging 不老
14. ファンドリー foundry 共同生産工場
15. ジャンクボンド junk bond クズ証券
これらのカタカナ語は、うちのダンナさんが読んでいた雑誌の『文芸春秋』から無作為に拾い上げたものです。いずれもきちんとした訳語のある言葉ですが、外国語をカタカナ読みにして使っています。
使っている本人が文章のなかでの語感を踏まえて、あえてカタカナ語を書いているというより、主にアメリカで政治経済をカジッタ著者が、カタカナ語を気楽に乱用しているように見受けられます。
言葉は生き物です。時代とともに、生活が変わるにつれて変化していくものです。語感というのは生活感覚なしにはとても空虚な、空々しいものになっていきます。
実態のないカタカナ語も繰り返し使われるうちに日本語としての語感を持つようになる可能性は否定しませんが、あまり安易に使われすぎているカタカナ語を目にすると、一体日本語はどこに行き着くのだろうかと、不安な思いにかられるのです。
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