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■現代語訳『枕草子』
  ~清少納言の『枕草子』を表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳
更新日2015/10/15



枕草子  第十七回

市は、辰(たつ)の市

 市は、たつの市、さとの市、海石榴(つば)市など、大和には市のついた町がたくさんあるけれども、長谷寺にお参りをした人が、必ずのようにこの地に泊るのは、観音さまとのご縁を大切にしたいという、特別の気持があるからだろう。ほかにもこのあたりには、おふさの市や、しかまの市や、もちろん飛鳥の市もある。

峰といえば

峰といえば、ゆづる葉の峰、阿弥陀の峰、そしていやたかの峰。

原には

原には、みかの原、あしたの原、園原なんていうのもある。

淵には

淵には、かしこ淵というのがあるけれども、一体どういう気持で、どなたがそうと教えて、そんな名前になったのだろう。青色の淵なんていうのも面白い。まるで蔵人が着るお召しのよう。ほかにも、隠れの淵や、いな淵なんていうのもあって面白い。

海といえば

琵琶湖のみずうみ、与謝の海、そして、かはふちの海。

陵には

陵みささぎには、うぐいすの陵、かじはぎの陵、そして、あめの陵などがあって、どれも歌に歌われして風情がある。

渡りといえば

渡りといえば、しかすがの渡り、こりずまの渡り、そして水はしの渡りなど。

たちといえば

たちといえば玉造(たまつくり)。どんなものにも、それらしい言葉や場所が、きまって付いていて、本当に風情がある。

立派な建物といえば

立派な建物といえば、まずは近衛の御門。そして二条院。みかい、一条も良い。染殿の宮、清和院、菅原の院、冷戦院、閑院、朱雀院、小野の宮、紅梅殿、そして県(あがた)の井戸殿。そして竹三条院や、小八条院や、小一条の院なども素晴らしい。

 

 

 

※文中の色文字清少納言が用いた用語をそのまま用いています。

 


第十八回



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谷口 江里也
(たにぐち・えりや)
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詩人、ヴィジョンアーキテクト。言葉、視覚芸術、建築、音楽の、四つの表現空間を舞台に、多彩で複合的なクリエイティヴ・表現活動を自在 に繰り広げる現代のルネサンスマン。著書として『アトランティス・ ロック大陸』『鏡の向こうのつづれ織り』『空間構想事始』『ドレの神 曲』など。スペースワークスとして『東京銀座資生堂ビル』『LA ZONA Kawakasi Plaza』『レストランikra』などがある。
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