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■よりみち~編集後記

 

更新日2018/07/19



ワールドカップ ロシア 2018がフランスの優勝で終了した。日本の初めての決勝トーナメント進出で大いに盛り上がったワールドカップだった。時差の関係で、午前1時とか3時の試合が多く、ブロック予選の期間、寝不足が連日続きかなり消耗したヒトも多かったと思う。日本チームは2ヵ月前の突如のハリルホジッチ監督更迭劇というまさかの事態が起こり、急遽、西野監督が選任されての急場のチームづくりとなったが、この監督更迭は世間や関係者に実にショッキングな出来事だったが、出場選手にはかなりプラスになった可能性が高い。すでに監督更迭で、日本に勝利はないことを予測させたし、よほどチームワークが破綻していたことを想像させたわけで、誰もが日本チームに期待するどころか、恥ずかしくない負け方の方を考えていたはずだ。そこが、出場選手にはラッキーだった。負けて元々、勝てば英雄になって日本に帰れる。こんなにプレッシャーのない国際試合はかつて一度もなかった。常に日の丸を背負い、無様なプレーは御法度、勝って当たり前、負けたら一生言われるという日本特有の暗黙の重圧が、今回だけはまるでなかったのだ。負けるにしても、頑張ったことを見せつければいいだけ。それは120%のチカラが出てきて当然だ。西野監督の采配も選手たちの気持ちを十分反映させたノビノビプレーを重視した戦略だった。
特に決勝トーナメントのベルギー戦は、選手たちの気持ちと監督の采配が合致して火花が出た瞬間だった。日本チームの国際試合で、これだけノビノビと、選手の個性を余すことなく発揮された試合があっただろうか。守りが堅いことで知れ渡っている強豪のベルギーに対して、なんと2点を先制したのだ。まさに奇跡が起こった。それも後半3分の1点目の原口元気の決勝トーナメントでの日本の初ゴールのシュートにしても、後半7分の乾貴司の無回転シュートにしても、これほど鮮やかなシュートはないというほどの完璧なシュートシーンだった。この瞬間、日本のサッカーレベルがもはや世界レベルに追いついた、サッカー先進国から日本人プレーヤーを探して、高額な移籍金を出して引き抜きに来るのは当然だと確信した。この奇跡の2点先制に、日本の経験不足が災いした。選手も監督も勝った経験がないのだ。それも2点も先制して、どう攻撃すべきか、守りに入ってはいけないということだけしかなかった筈だ。そして、後半20分にベルギーMF二人を替えてきてすぐの後半24分、フェルトンゲンのヘディングで見事なゴールを決められる。ベルギーの攻撃力の強さにやられてDFが怯んだことは間違いない。2点が1点差となり、楽勝ムードが一気に危険信号に変わり、ガッチリと守るべきか、さらに攻撃なのかという迷いがあったように思える。そんな動揺を見透かされたように、後半29分にはフェライニが同点弾となると文句なしの2点目をゴールに突き刺した。2点の先制で圧勝ムードがまるで敗戦ムードに変わってしまっていたことは否定できないだろう。でもまだ同点なのだ、このまま延長戦に突入すれば、また奇跡が起こることだってある、こう考えた時点で負けていたということだろう。後半のアディショナルタイム49分、日本の本田のコーナーキックから奪われたボールは、これぞベルギーのお家芸である超高速カウンター攻撃であっという間のゴールに迫った。9.94秒というジェットスピードで、最後はシャドリに3点目の決勝点を挙げられた。まさに完敗とはこのことだ。勝ち方が解っていないチームの悲劇と言ってよいだろう。この惜敗が将来に役立つ時がくるはずだ。
日本に勝ったベルギーは準決勝で優勝国のフランスと対戦、1-0で惜しくも破れたが、3位決定戦では優勝候補だったイングランドに2-0で快勝し、ここでも超高速カウンター攻撃の凄さを見せつけた。とにかくアザールのドリブルとキープ力には脱帽である。4年後のワールドカップ2022 カタールでは日本のベスト8を是非観たいものである。(越)

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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