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■よりみち~編集後記

更新日2022/10/20





新型コロナのパンデミック以来、この3年近くの間に世の中はえらく変わった感じがする。大げさに言えば、価値観までもが変わったのではないだろうか? 

世界的なパンデミックの中、1年延期され強行開催された『東京オリンピック2022』。無観客試合という前代未聞の国際試合を見せられ、五輪ビジネスのためだけにアスリートが動員され、それを象徴するように今年に入って五輪ビジネスの裏話やカラクリが暴露され、電通という広告会社が利権ビジネスのピンハネ業者で、元専務の高橋治之の懐には東京五輪だけで約2億円のワイロが流れていたことが判明した。ぼったくり男爵と呼ばれるIOCのバッハ会長も含め、もう五輪ビジネスには騙されないだろうし、もうすでにオリンピックへの熱い思いは消え去ってしまった気がする。IOCもJOCも一度解散して、理事や委員をすべて入れ替え、ビジネス色を消した本来のオリンピックに戻せるなら可能性はあるだろうが、今のままだとまた電通五輪が続くだけで、アスリートは団結してボイコットでもした方がいいと思える。

パンデミックの感染防止策により発展したのが「リモートワーク」だ。まさか会社に出社しなくても仕事ができるなど、デジタル専門会社であればある程度実現していたリモート出社が常態化して、それが普通になって、事務所をたたむ会社まで出てきたのだ。これはすごい革命的な変化だと思う。それもパンデミックによる緊急事態から、必要に迫られて開発され進化したオフィスシステムであり、日本ではこのパンデミックが発生しなければ相当出遅れた分野の改革がスピーディーに実行され、リモートワークでも十分仕事ができることが証明されてしまったのだ。もちろん、すべての業界でリモートワークが進んだわけではないが、実際に顔を合わせて打ち合わせをして、接待で人間関係を構築…と言われていた古い形式が全く不要であり、効率化の妨げだったことが判明してしまったのだ。この気づきは今後の日本経済に大きな影響を及ぼす可能性がありそうだ。日本独自の仕事の仕方が根本的に見直され、デジタル化によるデータ主義の仕事の手法が定着したわけで、日本の仕事のスタイルが大きく変わったことは明らかだ。但し、それが日本人に合っているのかどうかはまだ結論がでておらず、デジタル化の波に乗り遅れたオジン族の居場所がさらになくなりそうだ。

以前から“働き方改革”とか“デジタル化への変革”とか色々言われてきていたが、この世界的なパンデミックで否応なしに変えられた人々の働き方が今後どのような影響を及ぼすのか誰も分かっていないのだが、一度体験したパンデミックの危機意識や無常観は生き方を含め大きな教訓となって身体にしみ込んだ気がする。リスクを想定することの大切さ、何でも準備しておくことの重要性、あり得ないことが現実にいくらでも起こること、自分が感染により死に至る可能性が十分にあるということ、自分にとって何が一番大切なのか、このパンデミックで気づかされた人は多いはず。1340年代にヨーロッパで猛威を振るった「黒死病(ペスト)」は70年以上も続き、イギリスやイタリアの人口の8割が死亡したというから、明日は自分の番だと思って暮らしていたはずで、今回の3年程度では比べる対象にもならないだろうが、苦難にめげず打ち克ってきたしたたかな先人たちの存在と知恵の数々が次の世代に伝承されていくのだろう。(越)

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

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