■よりみち~編集後記

 


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更新日2008/11/06


アメリカ合州国第44代大統領が決まった。やはり変革の人、初の黒人大統領候補バラク・オバマ氏が圧勝した。金融危機や経済の低迷がアフリカ系アメリカ人の大統領というタブーをも打ち破ってしまった感じがする。なりふりなどかまっていられないほど、アメリカはあらゆる面で閉塞しており、もうリセットするしかないことに人々は気づき始めていたからだ。それにしても気になるのが、歴代大統領で黒人の地位向上を政策にした人がほとんど暗殺されているという現実である。当然、ホワイトハウスのセキュリティ担当がアメリカ政府の威信にかけて取り組むことだろう。そして、白人至上主義がすでに時代錯誤だということがアメリカ全土に浸透していることを願いたいものだ。そしてオバマ氏が、すでにアメリカ国内だけでなく、全世界の社会変革の期待の星であることを知ってほしいものである。
オバマ氏が大統領になってからの課題が山積しているのだが、まずは何よりも優先されるべき課題は、やはり今回の金融危機の打開だ。ここでついまずいてしまえば、ブーイングの嵐になってしまうわけで、新人大統領に最初からホームランを期待されているわけで、ちょっと荷が重過ぎて可哀想である。でも、この金融政策やシステム改革がうまく機能しなければ、アメリカの明日もなければ世界的な不況は解決しないわけで、なんとか知恵を絞って大改革をやって欲しいものである。
自由主義経済の隠れ蓑を着込んでサブプライムローンやらデリバティブ投資、ヘッジファンドなどなど、言葉だけ聴いていると、耳障りがよく、超現代的なイメージがある金融システムがのさばっているのだが、実態はどうかと言うと、ほとんどが機関投資家などによる金持ちのマネーゲームのためのさまざまな金融商品を開発していたにすぎず、問題が起こったとしても、尻拭いは絶対に彼らはしない。その犠牲になっているのは常に持たざる者、社会的弱者や貧困にあえぐ人々であり、巨額の血税が流されるだけである。その究極とも言える悪魔のような金融システムが「サブプライムローン」であることが段々と私にも分ってきた。アメリカに住む住民でさえ、この実態は分っていなかったようで、問題が大きくなって破産する人が激増し社会問題化して初めてひどいシステムであることが明るみに出てきた状態なのだ。
サブプライムローンは、「低所得者向けローン」と呼ばれているが、日本で認識される低所得者とは次元が違っていて、そのターゲットとなる人は、「破産宣告を受けている人」や「支払いの延滞を繰り返している人」などが中心で、日本の銀行では絶対に審査ではじかれお金が借りられない人たちなのだ。日本であれば、もし借りようとするなら無担保の「サラ金」か高利の「闇金」になってしまうはずである。このようにお金を借りたくても借りることができない人向けのローンだったというから驚きである。無知で教養のない弱者をだまして、いずれは破綻することを最初から分っていながら巨額の金を貸し付けてローンを組ませ、後のことは感知せずという、ほとんど詐欺商法に近いビジネスである。日本の悪徳サラ金業者が寄ってたかってローンを組ませたようなものである。どうしてこのローンのシステムに規制が入らなかったのか不思議でならない。後のことなど知ったことかと、目先の儲けだけを追求し、「最後のババ」さえ引かなければいいという金権主義が横行し、バブル時代特有の土地神話をひたすら信仰する人々が増え続け、人々の不安までも盲目的な信仰で呑み込んでしまったのだろう。結局のところ、問題の低所得者たちは、ローンの返済もできず、破産したり、ホームレスになったりと、さらに貧困の段階が進行して立ち上がれない状態にまで格差が一段と広がった。ビジネスの世界が、貧困層を食い物にするまで行き着いてしまったわけで、この先は非合法のビジネスしか残っていないはずである。この閉塞した最悪の状況をオバマ大統領はどのように改革してくれるのかとても楽しみである。日本もこのオバマ旋風に乗って民主党ももう少ししっかりして欲しいものだ。 (

 

 


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