のらり 大好評連載中   
 
■よりみち~編集後記

 

更新日2010/11/18


ついに日本は本格的なモバイル時代に突入したように思える。いずれそのような時代がくるかと思ってはいたが、こんなに早くやってくるとは思っていなかった。それもスマートフォンの進化とiPadの登場にあるようだ。家電製品の発展と普及の関係はいつもそうだが、最初に、憧憬というかゴージャス感で魅了する初期があり、その時にはまだ価格もかなり高く、商品が家庭にあっても空気が合わない高嶺の花的な存在なのだが、普及版や改良版でもっと便利でリーズナブルな商品が開発され、憧れから実用へと価格レベルも下がってきて、後はタイミングの問題だけになってくる。液晶テレビのことを思い出してほしい。十数年前から確かに存在したし、いいなと誰もが思っていたが、とにかく高価で、よほど余裕がないと手が出ない商品だった。それが徐々に安くなってサイズもどんどん大型化して、今ではどうだろう。32インチ液晶テレビが4万円台で買えるほど廉価な商品になっている。ある時期から急に安価になり爆発的に普及していく。モバイル時代に関しては、スマートフォンのiPhoneの登場あたりが火付けになり、それと時期を合わせるように、「イーモバイル」などのUSBタイプの超高速モバイルブロードバンドが売り物のデータカードやポケットWifiなどが常時接続でも4,5千円で使えるようになり、ついにはiPadの発売がモバイル時代の決定版となった。これからは、どれだけ公衆無線LANの普及速度が速まるかという問題とやはり電池の容量の問題だけだろう。従来の携帯電話利用者が次に買い替える時にはスマートフォンが定番となるだろうし、実際に無線LANやWifiで無料で電話やネットが使えることが普及するだろうから間違いなくスマートフォンやiPadなどの「gadget(デジタルガジェット)」=携帯情報端末が主流になり、ますます情報過多の生活になりそうだ。
次の流れは携帯料金やネット料金がさらに安価となり、そのネットワークの囲い込みの時代になりそうだ。現在の「Google」全盛時代のままなのか、新たな新興サーチエンジンや新しいネットワークが生まれるのかどうかに興味がある。Googleの成功の裏側には膨大なデータ蓄積と分析によるビジネス戦略があり、国家間のビジネスにまでその影響力が及んでいる。中国のGoogle拒否問題に関しては、表側から見ると中国のマスコミ統制や言論の自由の弾圧など、民主主義を否定する暴挙と見えるのだが、裏側から見るとGoogleによる個人データの囲い込みであり、アメリカの世界に及ぼす覇権の一種とも言えなくない状況にあり、今年4月9日?に起こった中国企業によるネットジャック(世界の10%近いネット経路を18分間に渡りハイジャックして、中国のサーバー経由で情報が流された)があったように、現実の問題として、ネットを遮断したり占拠したりするパイパー戦争もありうるわけで、世界中で依存度が高くなっているネット社会の中での覇権争いがすでに始まっている感じもする。
経済的にも政治的にも落ちぶれてきた日本がネット覇権の犠牲にならないためにも、国家戦略として、日本独自のサーチエンジンの開発やセキュリティ対策が急務であることを痛感する。尖閣諸島事件のビデオ映像が流出した問題にしても、日本政府にはまだセキュリティーの概念すら存在しなかったことが明るみにされ、日本の稚拙なネット管理体制であることが先進諸国の担当者に知れ渡ってしまったわけで、IT先進国だったはずの日本は能天気で無防備な国という印象を与えてしまっただろう。常に後手後手の対策や政策ばかりで、日本の先進的なイメージはもはや過去の話になってしまっており、国家的な戦略で着実に伸びている韓国はかつての日本の隆盛のごとくすごいスピードで発展を遂げていて、あれよあれよという間にはるかかなたにまで行ってしまった感すらある。この本格的なモバイル時代の突入に合わせ、日本人が最も得意とするこの分野での覇権争いを国家として取り組むべきであり、ここでも存在感を見せられなければどこで勝負できるのだろうと思ってしまう。電気自動車やその電池開発、太陽光発電、そしてモバイル技術などが今まさに日本の本当のチカラを見せられる舞台だと思えるのだが…

 

 

 


■猫ギャラリー ITO JUNKO

 

このコラムの感想を書く
 



のらり編集部

著者にメールを送る


バックナンバー

■更新予定日:毎週木曜日