■貿易風の吹く島から〜カリブ海のヨットマンからの電子メール

佐野草介
(さの・そうすけ)


道産子。小学生の時、フランス人4人がヨットで世界1周する記録映画を見て、人生の針路を決定する。水上生活者として20余年。前半は地中海、後半はおもに大西洋とカリブ海で暮らす。現在はカリブの砂州、カージョ・オビスボにヨットを舫い棲家とする。



第30回:プエルトリコ交通事情
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Caribbean Sea Map


Puerto Rico Map

■更新予定日:毎週木曜日

第47回:静けさを破るもの

更新日2002/06/27 


今月、ヨットの回航で3度、英領ヴァージン諸島へ出入りした。英領ヴァージン諸島は、セールボートのパラダイスだとかなり前に書いたが、よい風、大きなうねりが打ち寄せない海域、そこかしこにあるアンカーを入れるのに最適な湾、入り江などの自然の条件が揃っているのだ。

今回、英領ヴァージン諸島が、ヨット、取り分け帆で動くセールボートの天国なのは、自然に恵まれているからだけではないことを知った。 

帆かけ船の人種と、パワーボートの乗り手とは、耳の構造に大きな違いがある。パワーボートは腹に応える大音響を発するし、そのエンジン音に負けじとばかりにフルボリュームで音楽とは呼べない騒音を流す。そしてアンカレジに壮大な波を立て、すでにアンカーしているヨットを揺 らしつつ入ってくる。

ボートが止まるやいなや、ジェットスキーをデッキから降ろし、湾内を乗り回すのが常だ。いかなる理由からか、ジェットスキーの乗り手は徒党を組みたがり、ヨットの周りをグルグル廻るのを好むのだ。大海原に出て一人、海と戯れるタイプは皆無と言ってよい。見せたがりや、観てもらいたがりやなのだ。 

この20年、海のスポーツで何が変わったと言って、ジェットスキーの爆発的な進出ほど、海の環境を変えたものはない。

ところが、この英領ヴァージン諸島では、ジェットスキーを全く禁止する方向に出たのだ。時代の流れにそぐわないと批判されたりもしたが、結果、チャーターヨットの会社がこぞって、拠点を英領ヴァージン諸島に移して来たし、静かさを求めるヨット乗りが集まり、島の経済には大きなプラスとなった。

我々はジェットスキーのシツコイ蚊のような騒音にも、ワイングラスをヒックリ返す波にも悩まされることなく、入り江でのひと時を過ごすことができるのだ。

アメリカの13の国立公園では、2002年4月22日付けでジェットスキーを禁止した。そして新たに8つの公園でも9月15日から禁止される。

それに対し、ジェットスキーのメーカー、ディーラーが主体となった協会が音頭をとり、禁止は違法であるとして裁判に打って出ている。国立公園内でジェットスキーが自然破壊に繋がる根拠が明確ではないし、充分な調査を行わずに禁止を決定している、と言うのだ。

昔から水上スキーとトランジスターラジオ持ち込みを禁止した湾、ビーチは地中海で珍しくなかった。一度、あの静かさを体験すると、騒音に耐える神経が弱くなるのだろうか、充電のために発電機やエンジンを回す音さえ耳触りになってくるのだ。

久ぶりに日本に帰り、スキーに行った。

混んでいるのは狭い国のことだから致し方ない。しかしあのラウドスピーカーで四六時中流すヨーデル、ポピュラーソング、お願い、注意事項はどうにかならないものか。 

雪山に居て、英領ヴァージン諸島の静けさに思いを馳せたことだ。

 

 

第48回:生まれつきのヨット乗りはいない

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