のらり 大好評連載中
2021/06/03掲載

■新・汽車旅日記
~平成ニッポン、いい日々旅立ち
 
第731回「鯉は非常食 - 津和野 -」
 
津和野駅に戻り、窓口でSLやまぐち号の指定券をグリーン車に変更した。SLやまぐち号は昨年に客車が新しくなって、編成両端の展望車のうち、片側がグリーン車になった。せっかく乗るならグリーン車がいいと思っていたけれど、事前に手配したときは満席だった。しかし、もしかしたらキャンセルが出ているかもしれないと、念のため窓口で変更を頼んでみたら1席あり。これは幸運だった。さあ、ちょっと良い気分で津和野の街を歩こうか。津和野の名所と言えば道ばたの堀で泳ぐ鯉だ。テレビの旅番組や雑誌でも、鯉が泳ぐ通りが紹介される。あの風景は私にとって衝撃的だ。子どもの頃、下水道が整備される前の住宅街は道ばたに「ドブ」と呼ばれるU字溝があって、糞尿以外の生活排水が流れていた。悪ガキたちはそこで小便を垂らし、犬のフンが蹴り落とされていたから悪臭を放つ。底にはヘドロのような緑色の藻が張り付いて水になびく。そんな風景が当たり前だったから、道ばたで鯉が泳ぐなんて常識を越えている。それが津和野のイメージだ。街中のドブに鯉がいるなんて、津和野という町は素晴らしいところだと思う。…

杉山 淳一

杉山 淳一 ※今週休載

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2021/06/03掲載

■店主の分け前
~バーマンの心にうつりゆくよしなしごと
 
第421回「流行り歌に寄せて No.221 「ひとり寝の子守唄」~昭和43年(1968年)
私は、最初にこのレコードが発売された頃には、あまり聴いた記憶がない。デビュー曲の『赤い風船』もリアルタイムでのことは覚えていないし、両方の曲ともはっきりと認識したのは、18歳の晩夏に上京して来た後のことである。だから、私にとっての最初のおときさんの曲は『知床旅情』であって、それまでに十数枚に及ぶシングルレコードを出していたことは、当時まったく知らなかった。『ひとり寝の子守唄』が出てから5年ほどして、私は東京で初めての一人暮らしを始めたが、この曲ほどではないけれど、四畳半一間の暮らしはかなり殺風景なものだった。天井をネズミが動き回るようなことはなかった(これは、その後のアパート生活でも一度も経験したことがなく、大変ラッキーなことである)が、ゴキブリには随分手を焼いている。煎餅布団に、もみがら枕ではないが、ポリエステルか何かのわた詰め枕を置き、確かに寒さが沁みる夜などは、体育座りをそのまま横にしたようなスタイルで、ひざを温めながら眠った。アパートの目の前をバスが走っていたので、始発のバスが通る時に…

金井 和宏

金井 和宏  
   
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2021/06/10掲載

■ビバ・エスパーニャ!
~南京虫の唄
 
第13回「フランコ万歳! テロの時代 私的つぶやき 2」
 up
私がヒッチハイクでハンブルグからベルリンに向かった時、拾ってくれたのがイスラエル人のベルリン大学の教授だった。それが岡本公三のテルアビブ・ロッド空港乱射事件の後、ミュンヘン・オリンピックの前だった。彼はしきりに日本人がなぜアラブやパレスチナに共鳴するのか、なぜ反イスラエル感情を持つのか、なぜ岡本公三のようなテロリストを送り込んでくるのか訊いてくるのだが、私には答えようもなかった。その教授は、“パレスチナのアラブ人は自らを捨ててかかるテロを実行する度量がないから、カミカゼの特攻精神を持っている日本人を利用した…”とまくし立てた。私の大学時代は、学園紛争に明け暮れていた。心情的な共感を持ってはいたが、紛争のリーダーたちにどこか自己肥大した狂信的な要素があるのを感じていた。何度か誘われるままにデモに参加し、また日比谷公会堂での集会、学内の団体交渉に後ろの席で参加した。参加というより、興味本位のオブザーバーだったと今になって思う。“ゼンガクレン(全学連)”は明治維新前の“ローニン(浪人)”同様、西欧の…

佐野 草介

佐野 草介 

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2021/06/10掲載

■亜米利加よもやま通信
~コロラドロッキーの山裾の町から
 
第711回「取り壊される銅像」
up
日本をJR外人パスを使って駆け足で回った時、ちょとした景勝地や岬、丘の上にその地を訪れた文学者、詩人、俳人の詩、和歌、俳句を刻んだ石碑が多いのに感動しました。それが自然の風景に溶け合うように立てられていて、眺めの邪魔にならず、逆に郷愁を誘うのです。サスガ…小さな庭に小宇宙を生み出す日本人だと感心したことです。ところが、汽車の窓から見える巨大な観音像、あれは一体何なのと言いたくなるほど、周囲の山々の美しさをぶち壊しているのに呆れ果ててしまいます。自分の醜い巨大な像があちらこちらに建てれているのを観音様が天から見たら、コッパ恥ずかしくてアナに逃げ込むのじゃないかしら…。アメリカを代表する銅像といえば、なんと言っても“自由の女神”でしょう。アメリカ独立の記念にフランスがアメリカにプレゼントしたものです。いつも喧嘩し、それでいて仲の良いような悪いようなフランスとイギリスですが、独立戦争でイギリスを破った新興国アメリカさん、よくぞやったお祝いとして“自由の女神”をプレゼントしてくれたのです。もう一つ、大人気なのは、ラッシュモアの岩山から浮き出るように4人の大統領の巨大な顔を彫ったモニュメントでしょうか。ダイナマイトのコントロール技術が完成しつつ…

グレース・ジョイ

Grace Joy  
(グレース・ジョイ)
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2021/06/10掲載

■ジャック・カロを知っていますか?
~バロックの時代に銅版画のあらゆる可能性を展開した天才版画家とその作品を巡る随想
 
第5回「最初の公的な仕事」up 
カロはフィレンツェで、ジウリオ・パリジからクリエイティヴな刺激を受けながら、また、未だ独り立ちするほどではなかったために実家から仕送りを受けつつ絵画の模写をしたり、それを版刻する技術を磨いていたようです。ただ残された作品を見る限り、自分が興味を持てるものとそうでないものとで、傾ける熱意の度合いがはっきり違うように感じられます。それというのも、カロがフィレンツェにやってくる元々の理由であったスペイン王妃の追悼葬儀に関してつくられた、彼女の生涯を描いた版画集にはカロらしさが全くないからです。この仕事には、カロだけでは心もとなかったからなのか、もう一人別の版画家が起用されていますから、共同作業ということ自体がカロの性分に合わなかったのかもしれません。もしかしたら、祝祭好きで奇抜なデザインや仕掛けが得意だったパリジ自身が、亡くなったスペイン王妃の記録版画集というものにそれほど重きを置いていなかったということなのかもしれません。ともあれカロは1614年、おそらくはパリジの推挙があったからでしょうが、22歳の若さで、トスカーナ大公コジモ2世から宮廷芸術家に任命されます。

elia

谷口 江里也 

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2021/06/10掲載

■よりみち~編集後記 up 
6月10日までの新型コロナウイルスの各国別感染者数(死者数)の推移をまとめました。
covid19_weekly_061021_s
※イスラエルでは週間感染者数が68人、死亡者数3人にまで減少しているが、イギリスでは、週間感染者数が4万1千人を超えており、死亡者数も増加傾向にあり、デルタ株が感染拡大している。日本は緊急事態宣言の延長により確実に減少しているが、宣言解除によるぶり返しがかなり心配である。

よりみち

「のらり」編集部

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