■ダンス・ウィズ・キッズ~親として育つために私が考えたこと

井上 香
(いのうえ・かおり)


神戸生まれ。大阪のベッドタウン育ち。シンガポール、ニューヨーク、サンフランシスコ郊外シリコンバレーと流れて、湘南の地にやっと落ち着く。人間2女、犬1雄の母。モットーは「充実した楽しい人生をのうのうと生きよう」!


第26回:子どもに伝える愛の言葉

更新日2001/10/23 


下の娘が先月2才の誕生日を迎えた。我が家にとっては新たなるterrible twoの出現である。そして、我が家の新しいterrible twoは、期待に違わないterrible twoぶりを発揮してくれる。そうなると、ついつい上の子がterrible twoだった頃などを思い出した。

そこで、ふと気がついたこと。上の子が2才のときはアメリカにいたので、英語に囲まれて暮らしていた。自然と私の思考も行動もどちらかと言えば「英語より」であったように思う。当時の私が毎日頻繁に上の子に言っていたことで、下の子にはあまり言っていない一言があるということに気づいた。それは、「I love you」である。

「I love you」などというと、日本では多分恋人や夫婦の男女間でのみ使われる言葉のように思われているのではないだろうか。実は、英語では「I love you」は極めてよく使われる日常語で、親が子供に、子どもが親に頻繁に言っている。日本語ではなかなかそれに変わる言葉やニュアンスは表現できないように思う。「愛してる」ではもちろんないし、「大好き」でもちょっと違う気がする。

上の娘は2歳半から、帰国するまで週に3回午前中だけ幼稚園に通っていた。その幼稚園は日本人学校ではなかったので、娘は幼稚園にいる間は英語のみの環境で暮らしていたわけだ。けれども、もちろん彼女にとっては英語は外国語であるわけで、かなりのストレスがあったと思う。だから、迎えに行くと走ってきて私に飛びつくのだった。ある日、いつものように私に飛びついた娘が 「Mommy, I love you!!」と言ったのだ。

アメリカ人の友達が子供に、あるいは子どもが親に「I love you」と言うのは日常的に聞いていたけれども、自分の娘にそう言われたのは初めてで、びっくりした。かろうじて、「I love you, too!」とすぐに返事したものの、内心はどぎまぎしていた。でも、とても嬉しかった。

よく考えてみると、娘を大事に思う気持ちは私にとっては当然のことであるけれども、はたしてその想いのすべてが娘に伝わっていたのだろうか。多分、答えは否であるように思う。娘に「I love you」と言われて改めてちゃんと言葉で伝える大切さを知った。言葉に出して伝えてもらえるから嬉しいということも。

だから、下の娘にもちゃんと言葉で伝えようと思う。何物にも代えがたく大事に思っていることを、ちゃんと言葉で言おうと思う。でも、さすがに日本語に囲まれている日常で、「I love you」は使えない。いろいろ考えた結果、いい言葉を思いついた。下の娘には、「I love you」の代わりにこう言うことに決めた。

「ママの大事なふーちゃん」

 

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