■新・汽車旅日記 〜平成ニッポン、いい日々旅立ち 第422回「地上と地下の乖離 - JR東西線 -」 放出という地名をどうして「はなてん」と読むんだ。いや地名はたいてい、元の言葉に字を当てたものだから、なぜ「はなてん」という地名に「放出」という字を当てたんだ。不便じゃないか、と会社員時代の私は思っていた。不便の理由は難読地名だからではなく、取引先に放送出版という名の広告代理店があって、略して「放出」だったから。その会社の所在地は上本町だった。ほんとうにややこしい。そんな思い出はともかくとして、地名のほうの放出は伝説に由来するらしい。名古屋の熱田神宮からご神体の剣を盗み出した者がこの地で荒らしに遭い、神の怒りだと思って盗んだ剣を放した。その「放って」が語り部に「はなってん」として伝承され、「はなてん」になったという。それなら当て字は「放手」ではないか。地名は不思議である。その放出駅から片町線の電車に乗る。15時23分発。予定より22分の遅れだ。銀色の車体に紺と橙の帯を巻いた207系電車であった。行き先は西明石で、京橋からJR東西先に乗り入れ尼崎へ到達し、さらに東海道本線、山陽本線に乗り入れる。始発は片町線の長尾駅で、2時間以上のロングラン列車だ。例によって運転席の真後ろに乗った。放出を出ると線路の砂利が新しくなっていて、両側の柵が簡素である。
杉山 淳一 バックナンバー
■店主の分け前 〜バーマンの心にうつりゆくよしなしごと 第210回「流行り歌に寄せてNo.22 「野球小僧」〜昭和26年(1951年)」 今年のプロ野球、開幕してひと月あまり経過したが、パ・リーグは北海道の日本ハムが順調に飛ばし、セ・リーグは我がドラゴンズとヤクルトの調子が良いようである。かつて巨人軍のホットコーナー獲得にしのぎを削った両雄が、今はセ・リーグの熾烈な最下位争いを演じているのも微笑ましい。あまり意地悪なことを書くと、該当球団ファンからお叱りを受けそうだから止しておくが、スター選手たちの多くがメジャーリーグに移籍してしまい、今年はダルビッシュも国内から姿を消したにもかかわらず、それでも日本人の野球熱は冷めることはない。娯楽が野球とあと少しのものに限られていた時代ほどではないにしても、夥しい数のファンが球場に足を運び、テレビで、ラジオで、そしてネットでそのプレーに一喜一憂している姿が、以前と変わりなくあるのだ。娯楽というものが野球に相撲、そして映画ぐらいしかなかった時代の、まさに「大野球賛歌」である。聞いている方が浮き浮きしてきて、グローブを嵌めたり、バットを振ってみたりしたくなるような、躍動感が、この歌にはあるのだ。当時、国民の多くが野球を大好きなその中で、芸能人に於いてはその野球好き振りが人後に落ちないと自他共に認められるのが、灰田勝彦だという。
■フロンティア時代のアンチヒーローたち 〜西部アウトロー列伝 Part4 第67回「ビリー・ザ・キッド その67 〜サンタフェの拘置所」 ラスベガスからサンタフェへの汽車での護送は、それまでの馬車に比べ快適だった。パット・ギャレットと警護団、囚われ者のキッドたちはまさに、鳴り物入りでサンタフェに向かった。途中停車する町々で物見高い群衆に囲まれ、パットは大いに男を上げ、キッドたちも列車の窓に群がる人々に応えている。キッドは列車の窓越しに因縁浅からぬラスベガス・ガゼット紙の記者クーグラーのインタビューにさえ応じている。キッドは、「お前が俺についてイロイロ書いたことについて、俺は何とも思っていない。どちらにせよ、人は自分の信じたいことを信ずるものだし、良い面には目をつぶるものだ。俺はギャング、盗賊団のリーダーだったことはない、ただいつも一個人としてのビリーであっただけだ」と語っている。キッドは1881年の正月をサンタフェの拘置所で迎えた。サンタフェ拘置所はウォーター通りにあり、ニューメキシコ領域政庁とは目と鼻の先だった。キッドは拘置所から、都合4通の手紙を知事ルー・ウォーレスに書いている。初めはただ単に是非会いたいから、僅かな時間を割いてもらいたいというだけだった。が、知事からの返事はなかった。 ルー・ウォーレスには、キッドを相手にする数分すらなかった。第一、ルーはニューメキシコにいなかった。
■亜米利加よもやま通信 〜コロラドロッキーの山裾の町から 第260回「猛犬ラットワイラーとピットブルの悲劇」 犬物語の続きです。またまた、地元のコロラド州でピットブルに子供が咬まれ重傷を負いました。少年の顔は何回、何年にも及ぶ整形手術をしても元通りにならないだろう…とお医者さんが言うほど咬み潰されてしまったのです。この獰猛なピットブルは、ブルドックとテリアを混血させ、闘犬用の猛犬として種を固定した犬で、俗に"アメリカン・ピットブル"として勇名を馳せています。猛犬のもう一方の雄は"ラットワイラー"で、こちらの方はドイツで警察犬として作られたといいますが、純血種の欠点でしょうか、気性が変りやすく、今までおとなしく誰にでもなついていたのが、一瞬にして飼い主や家族を襲ったりしますし、他の犬をかみ殺したりするので有名です。この24年間に、アメリカで284人が犬に咬み殺されています。その80パーセント以上がこの2種の犬、アメリカン・ピットブルとラットワイラーによるものです。その数は、サメやワニに食べられた人、クマやマウンテンライオンの襲われ、死んだ人の総計の何倍にもなります。咬み付かれただけなら、ということは咬まれて医者に行った人だけで年に470万件に達しています。チワワやダックスフンドのような小型犬、ゴールデンリトリバーやセッターのような狩猟犬が、何かの拍子にパクリとカジッタ程度ならわざわざ病院へ行かない人も多いでしょうから、この470万件という数字も控え目でしょう。
■現代語訳『風姿花伝』 〜世阿弥の『風姿花伝』を 表現哲学詩人谷口江里也が現代語に翻訳 第49回「花修云(かしゅうにいわく) その四の二」 また為手のなかには、上手な割には能を知らない為手もいれば、それほど上手でもないのに能というものを良く知っている為手もいる。貴い舞台や晴れ舞台などで、上手だけれども、間違って能を演じてしまったりするのは、能を知らないせいである。また、それほど達者ではなく、技もそれほどではない為手、つまり初心者ともいうべき為手が、紫宸殿などの前の大庭で演じても花を失わず、観客からさかんに誉めそやされたりして、演技にむらがなかったりするのは、為手としての上手さというより、本質的な意味で能を良く知っているからである。この両方の為手に関して言うならば、そうしてどんな大切な晴れの舞台であっても、常に良い能をするならば、その為手の名声は長続きするであろうし、上手ではあっても、その達者ぶりの程には能を知らない為手よりも、少し至らぬ為手であっても、能を良く知る為手の方が、一座を起こし率いる棟梁には向いているといえる。能を良く知っている為手は、自分自身がやっていることで至らないことも知っているがゆえに、思うように出来ていない点を考えて、上手くできることがより表れるように能を仕立てることが出来るので、観客からいつも褒められ、褒美をいただけるような能を行うことができる。
■よりみち〜編集後記 2012年4月26日(木)、午前10時すぎ、小沢一郎民主党元代表の無罪判決が言い渡された。なぜか99.9%無罪が決まっていた裁判だったようで、誰もこの判決に驚きなどはないはずなのに、日本中の人々が注目していた不思議な裁判だった。小沢元代表という人は、何ゆえこれほどまでに注目される存在なのだろうか。また、小沢氏は何ゆえこれほど政党を新設し、そして自らつぶしていくのだろう。自由民主党(自治大臣・幹事長)→新生党(代表幹事)→新進党(党首)→自由党(党首)→民主党へ合流(代表・幹事長)と、ほとんどが自分で壊して新しい政党を立ち上げ、また分裂して新党を立ち上げるか合流するかしているお山の大将的な存在で、トップ・中枢に自分がいないと気に入らない性格であることは間違いない。自民党時代は辣腕・豪腕の代名詞的存在で、田中角栄→金丸信という金権政治の中枢で采配を振るってきたわけで、43歳という若さで自治大臣になっている。政治は「金」と「数」という田中角栄の教えを忠実に実現しているようで、常に多額の金銭問題がつきまとっていることも小沢氏の特徴だ。首相になることを最大の目標に政治活動をしているのだろうが、結局のところ、一度もそのヒノキ舞台に立てていないわけで、たぶんこの夢は果たすことはできないだろう・・・
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