第254回:人口論と歴史的事実
昔、マルサスの人口論というのを習ったことがあります。きっと誰でも知っている理論で、"人口は幾何学級数的に増えるが、食料は算術級数的にしか増えない…"という、なんだかもっともらしい理論でした。
確かに、マルサスさんが生きていた時代には、避妊、バースコントロールも発達しておらず、結婚したが最後、産めよ増やせよ地に満ちよとばかり、鼠算式に人口は増えるものと考えたとしても、間違いではなかったでしょうし、地球上の耕地面積を見れば、どのくらいの農業生産物が見込まれるかを計算するのも不可能ではなかったでしょう。マルサスさんの人口論、食料論はいかにも、もっともらしく響いたものです。
しかし、今になってみると、彼の理論が間違っていることは現実が証明していますし、トンチンカンでした。人間は常に進歩していますし、ある程度、将来を見越し、それに備える能力があるのです。爆発的に人口が増えていた中国で、政府の号令一発、一子政策がこれほど徹底するとは、マルサスさんの予想を超えていたとしても、彼を責めることはできませんが。
2010年に日本の人口は1億2,800万人でしたが、このまま減り続けると2060年には8,600万人になってしまう。これでは国として機能しなくなる……と盛んに警鐘を鳴らす人たちがたくさん出てきました。
日本の人口は、平安から江戸時代までほぼ頭打ちの状態でした。だからと言って、国はなくなりもせず、潰れもしませんでした。
人口の激減は、歴史上何度も起こっています。アイルランドで大凶作が続いたときには、生きている人間より幽霊の方が多いと言われましたし、有名な30年戦争のときには、今のドイツ領土の人口は3分の2に減りました。その前のボッカチオの時代のペスト大流行でも、やはりヨーロッパ全体の人口が3分の2になっています。
アメリカ全体では人口は増えていますが、主にスパニッシュ系と黒人だけが増え、アングロサクソン、コーカソイドは減っています。近い将来、アメリカは産児制限を認めないカソリックばかり、そしてカソリックを信奉するスパニッシュ系ばかりになってしまうと懸念する人もいますが、それはそれで一向に構いません。彼らもアメリカ人なのですから。
日本の人口減少は、すでにその傾向が分かっているのですから、突然降って湧いたようなペストや戦争、梅毒とは違い、その原因を突き止め、対策を練ることが可能です。少ない人口でよいとする国にしていくか、人口を増やすしかないのですから。
草食系の日本男児たちの肉体を大改造し、精力あふれるマッチョに作り変えることは不可能でしょうし、生まれてくる子供たちのために住みよい世界、環境をつくるというのも女学生的発想で、40年や50年では無理でしょう。
現実的なのは、日本に来たい、日本で働きたい人たちが近くにたくさんいるのですから、フィリピン、インドネシアなどの隣国から移民を受け入れることです。そのための教育機関を整え、日本語と日本文化を教え、日本人になってもらうことです。
歴史の中で帰化人の果たした役割の大きさを考えて見てください。焼き物、建築だけでなく、源頼朝が鎌倉に幕府を開くまで、関東はほとんど帰化人たちによって開かれた……という歴史家さえいるくらいです。
新しく日本人になった人たちは、もちろん日本国民として税金を払い、国を支えていくことでしょう。
フランスの大統領、サルコジさんは、ハンガリーからの移民です。日本にも朝鮮系、中国系、フィリピン系の議員、首相が誕生する日がくるといいのですが…。
偏狭な愛国主義、ヒットラーのような純血主義は、逆に国も民族も滅ぼすことになるのは歴史が証明してますよ。
第255回:イースターのハレルヤコーラス
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