■よりみち~編集後記

 


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更新日2005/02/10


ソウル・ミュージックの神様的な存在・盲目の天才アーティスト・レイ・チャールズの半生を描いた「Ray」(テイラー・ハックフォード監督)を観てきた。レイ役のJamie Foxx (ジェイミー・フォックス)には脱帽である。ここまで自然に演じられると、本物がどっちだったのかわからなくなる。かえってジェイミー役のレイの方がかっこよく見えてくるから不思議だ。特にピアノを弾くシーンがあまりに自然なので、どんなに練習したのだろうと思っていたが、後で資料を読んで納得した。ジェイミー・フォックスも3歳からピアノを始め、実際にレイ・チャールズの前で演奏して太鼓判を押された腕前なのだそうだ。まるで本物のレイがのり移ったような演奏シーンも彼だからできたのかもしれない。また、ジェイミー・フォックスを観てどこかで観た顔だと思ったら、最近見たトム・クルーズ主演の「コラテラル」で準主役のタクシードライバーのマックス役を演じていた。この映画を観て、いい役者だなと思っていたのだが、まさかレイ役をやっていたとは。次の作品が楽しみな俳優だ。レイ・チャールズが失明する前の子供時代からソウルの神様と呼ばれる時代までの人生を忠実に再現した内容とのことで、その音楽の天才ぶりの一方で、子供時代のトラウマが原因していたのか、女とヘロインに溺れ、麻薬で2度も逮捕されていた。生前のレイ・チャールズがこの映画制作の条件として、ありのままに描くことを提示したようだが、神様と呼ばれた男の現実はかなり荒廃した生活だったことがわかる。1965年にヘロイン中毒から自らの意志で決別し、復活した天才は2004年まで歌いつづけた。1950年代のアメリカの黒人差別時代のシーンが出てくるのだが、ほんの50年前にアメリカという国が黒人を隔離していたことを改めて見せられるとやはりショックである。南アフリカのアパルトヘイトがどうしても話題になりやすいが、ブッシュがさかんに自由の国アメリカを強調し、アフリカ系女性国務大臣誕生を祝っている国が50年前、レイ・チャールズが活躍していた時代でも黒人差別が続いていたのだ。アメリカの自由の歴史といってもまだ始まったばかりというのが現実なのではないだろうか。(K

 

 

 


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