■よりみち〜編集後記

 


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更新日2009/02/26


まさかの快挙が起こった。映画『おくりびと』(滝田洋二郎監督作品、公開 2008年9月13日)が日本アカデミー賞10部門ばかりか、本家本元アメリカのアカデミー賞外国語映画賞を受賞してしまった。米アカデミー賞は日本映画として初受賞だというからすごいことである。封切り後、どうもテーマが納棺だけにしんどそうなイメージがあって、体調万全な時に観たいと思ってしばらく保留にしていた作品だったが、映画批評などでやたら褒められているので10月に入って観たのだが、重いテーマが実にあっけらかんとユーモアたっぷりに描かれていて、グイグイと引き込まれていく映画で、いつの間にか納棺士という職業に対して尊敬の念さえ抱いている自分に驚いた。現に、この映画を観て、納棺士を希望する人が殺到しており、納棺士協会などがうれしい悲鳴のようだ。
重く暗いテーマをこれほどユーモラスに語り、さらに生きることの意味を考えさせ、人の優しさを感じさせてくれたのは、小山薫堂の脚本と滝田洋二郎監督の演出の力が大きいと思える。あとで調べて驚いたのが、小山薫堂は初めての映画シナリオだという。才能のある人は経験など関係がないようだ。また、滝田洋二郎監督は「痴漢電車シリーズ」など成人映画出身で、 話題作を連発して有名になった監督らしく、酸いも甘いも知り尽くした映画職人という感じだろうか。エロもグロも聖なるものも描ける監督だからこそ、生身の人間を描くのがうまいのだろう。キャスティングも抜群だ。少ない登場人物だが、いるだけで味がある脇役を揃えているのがすごい。山崎努、峰岸徹、余貴美子、吉行和子、笹野高史と、名前を書いただけでいい映画の予感がする。唯一、主人公の本木雅弘の妻を演じる広末涼子だけは、私にとっては違和感があった。他のキャラクターがあまりに自然に馴染みすぎているからなのかもしれないが、広末の役だけが少し浮いている感じがしたのだ。制作ノートを読んで合点したのだが、当初はもっと年配の女性で本木雅弘と同世代の30代後半の女優を想定していたシナリオだったらしく、キャスティングが難航し、広末涼子が急遽抜擢され、そのためにシナリオもその部分が大きく改訂されたようなのだ。深津絵里や中谷美紀あたりが演じた方がより説得力があったのではないかと思えるのだが・・・。
ともあれ、日本映画としては後世に語り継げる秀逸な作品であることは間違いない。それにしても、この映画化のアイディアを主演の本木雅弘自身が10年も前に自らプロデューサーに持ちかけたというからすごい。そのきっかけがインドのベナレスでの体験だったようで、これまたうなずける話である。世界中の人にぜひ勧めたい日本映画ができたことは実に喜ばしいことだ。合掌。 (

 

 


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