■よりみち~編集後記

 


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更新日2004/03/25


世界ではなんとも不快で不幸な事件が続いている。スペインの鉄道連続多発テロが起こり、やはりアルカイダの犯行声明が出されたと思っていたら、まるでその報復のようにパレスティナではカリスマ指導者がイスラエル軍によって暗殺された。これから泥沼のような報復テロ合戦が始まりそうだ。かつて歴史的にこのような陰湿なテロ合戦はなかったはずだ。これが現代的な戦争というものだとしたら、そこにはかつて存在した暗黙の戦争ルールなど全く存在しない、眼には眼の怨念だけを増大させる戦法のわけで、かつてのナチスのような人種差別から大量殺戮につながるヒステリー現象まで起こりかねないのではないだろうか。現在この戦いのカギを握っているのはやはりアメリカだ。そしてその裏でイニシアティブをとっているのがシオニストと呼ばれるユダヤ民族主義者であり、すでに宗教の枠を越えたところで世界を動かしている。キリスト教とユダヤ教はいわば親子のような宗教で(このように断定すると叱られそうだが…)、ユダヤ教のプロテスタント的な存在としてキリスト教とイスラム教が同時代に生まれたように思える。ユダヤ教は母系による血族だから、選民意識が強いことは確かだが、さらに宗教はすべてユダヤ教から始まっているというどこか優越意識があるように思える(これもナチスの発想だな…)。いまから20年以上も前になるが、イスラエルと近隣のアラブの国々を旅行したことがあるが、エルサレムの異様な光景は今でも忘れられない。ユダヤ教の聖地「西の壁(嘆きの壁)」のすぐ手前や近くにはイスラム教の聖地「エル・アクサ寺院」やムハンマド(マホメット)が昇天したとされる「岩のドーム(黄金のドーム)」があり、その地域はイスラム教徒が管理していて、銃を持つ兵士によって厳重な警戒が常に行われていた。ユダヤ教徒はまるで間借りしているような場所で、怯えながらお祈りをしているような光景だった。これがユダヤ教を国教とするイスラエルの現実だと思うと暗澹たる気持ちになったことを覚えている。そして今、何の進展もあるどころか20数年前よりもさらに状況は緊迫して悲惨だ。宗教にとって聖地は不可侵であり、教徒の拠り所であり精神的な核となる場所である。その同じ場所に二つの相反する宗教が生まれてしまった歴史的不幸と、どちらも納得させることができないというどうしようもない現実があるわけで、この聖地の問題は永遠に解決できない問題だろう。それにしてもブッシュはなんでそんなにシオニストのご機嫌をとるのだろう? アメリカはイスラエルとパレスティナの問題に関して、常に冷静で中立な態度を示すべきで、どちらに荷担しても結果は最悪なのは歴史が証明しているはずなのだが…。(K