■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日


更新日2004/04/01


私が子供の頃、北海道にはニシン(鰊)が大量に押し寄せていた時期があった。でも全く記憶がないから赤ん坊の頃かもしれない。日本海側の漁村にはニシン場と呼ばれる身欠きニシンを製造する作業場があったし、そのニシン漁で巨万の富を築きニシン御殿があちこちにある。海岸に押し寄せる銀色のニシンのうろこでキラキラ輝いていたというほど、いくら獲っても獲りきれなかったらしい。私の親父は猟師の息子だったから、よく手伝いをやらされたようだ。海岸で手づかみできたと主張するのだが、なかなかその光景を想像することができなかった。とにかく異常繁殖がその時期続いたようで、ニシン景気というものがあったようだ。それが最近では、ニシンも高級魚になってしまい、安くておいしい魚が北海道でも食べられなくなってきた。その昔、私が小学生の頃は、ハタハタなどは雑魚の部類で、一尾単位ではなく一箱単位で買ったものだった。子供の頃の印象として、今でもぼんやりと覚えているのが、クジラが日本海でも獲れたときのことだ。港の近くに迷い込んだクジラを漁船が取り囲んで港に追い込んだようだ。町中が大騒ぎになって、町の人々がこぞって港に押し寄せ、クジラの解体ショーになったことを覚えている。まだ、小学生の1、2年だったと思う。薙刀のような大きな包丁で解体されるクジラを港に上げられた漁船の上から覗き込んでいたが、クジラの大きさに圧倒され、かなりショックをうけた記憶がある。その後、熱を出して寝込んだ時は、よくこのとき見たクジラに食べられそうになるという夢を繰り返し見たものだ。日本の漁獲量は年々減り続け、回復の兆しが見えない以上は、どんどんと魚は食べられなくなるのだろうなと思っていたところ、朗報が聞こえてきた。日本海側の漁業の町、増毛町というところで、数十年ぶりのニシンの大漁で、うれしい悲鳴だというのだ。多い日には1隻の漁船が2トンも獲るのだ。もちろんかつてのような異常繁殖ではないが、昨年の漁獲高の100倍をすでに越しているそうだ。さらにうれしいのが、この大漁は北海道と漁業従事者が8年前から取り組んできた魚の放流や、若いニシンの保護策などが功を奏してきた結果だというのだ。環境破壊で魚が減ったことは事実だが、再生も可能なのだということがうれしい。このような育てながら魚を獲る発想に転換できれば、もっと魚を安く食べることができるはずだ。魚好きにとってはこのような動きが各地に拡大して欲しいと思っている。 (