■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

更新日2003/05/08

トンビがぐるりと輪をかいて、枯れた田んぼの畦道を猫がひょろひょろと歩く。GW中に行った山形で堪能した田舎の風景だ。田舎で育っ たことなんかないくせに何だか懐かしい気持ちになって心和む。ところで今回旅した山形・新庄の方言は、語尾になぜか「じゅ」を付ける。茶髪の女子高生が「んだじゅ(うん、そうだよ)」なんて言っているのを聞くと、思わず私まで「んだじゅ、んだじゅ」ってニヤニヤしながら頷いちゃうくらい脱力感のある語尾。これを日本中で採用したらみんな脱力していいんじゃないかなー。んだじゅ。(瀬尾


とんでもない男がいたものだ。スティーブン・スピルバーグ監督が惚れ込んだのも当然かもしれない。この男とはフランク・アバネイルというニューヨーク州生まれのアメリカ人。映画『Catch me if you can』 の主人公であり、自称「20世紀で最も悪賢い偽造小切手の使い手」と自慢しているように、誰もが認める悪党であり、4大陸26ヵ国を荒らし回り、250万ドルを荒稼ぎした犯罪者なのだが、どこか憎めない、そして魅惑的な男である。映画でのユニークで痛快なストーリーは省くが、その手口は大胆でありながら緻密に計算され、誰もがその場では騙されたことに気が付かない。また、ポリシーとして、決して個人を陥れる詐欺はせず、法人(主に銀行と大企業)しか相手にしないというのも鼠小僧的である。そして一番驚かされるのは、その犯罪を行った期間が16歳から20歳までの少年期と呼べる時代ということだ。21歳ですでに引退を考えていた。不思議なのは、16歳の少年が10歳以上ごまかして、パンナムの副操縦士としてジェット機に乗ったり、小児科医として病院に勤務したり、弁護士として法廷に立ったりしながらも、一度として化けの皮が剥がれたことがないのだ。本人も言っているように詐欺は偽造品の品質以上に、それを扱う人間が魅力的で自信にあふれているかにかかっているようだ。そう言われてみると、詐欺事件の場合、なぜこんな単純な仕掛けが見抜けないのかと思うケースが多いが、実はそこに詐欺師の魔法のテクニックがあるから、簡単に引っかかるのだ。映画もある程度楽しめたが、書籍の『世界をだました男』を読んで、実話の方がその数十倍面白いことが分かった。映画を観てちょっと不満があった人は、本を読んでみることをお勧めしたい。それにしても、スピルバーグ監督よ、ちょっと脚色しすぎていませんかね? (