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■とても昔の思い出の話になるのだが、実は現在の第47代アメリカ大統領であるドナルド・トランプと私は、仕事でちょっとした繋がりがあったのです。今から35年前、私が35歳の時のことです。
当時の日本経済はバブル真っ盛りで、とにかくカネ余りが異常で正直怖いくらいでした。1989年10月、三菱地所がニューヨークの中心にある「ロックフェラー・センター」を所有するロックフェラー・グループの株式51%を取得して、約8億4,600万ドル(約1200億円)で買収した、まさに日本のバブル経済のピークだった頃です。
私は銀座1丁目にあった不動産会社の社長と何故か縁あって雇われ、社長室長という肩書で本拠地である札幌と東京を往復する生活が続いていました。札幌では多数のマンションやテナントビルの建設、千歳空港近くのゴルフ場建設、岩内ではスキー場の経営とニセコウエストバレー・リゾート計画など、今となっては嘘のようなリゾート開発のデベロッパーで、社長の描く夢のリゾート構想を現実化するために日夜動き回っていました。
そんなある日、ハワイ支店(社長の別荘管理やハワイのホテル買収のために日系二世の社員が駐在していました)から社長にニューヨーク中心部にある「トランプ・タワー」が売りに出されている情報が舞い込んだのでした。
「ロックフェラー・センター」の買収劇が世界中で大ニュースになっていましたので、今度は「トランプ・タワー」かと思いましたが、それが何故に北海道のリゾート開発会社にまで話が来るのかさっぱり理解できなかったのですが、どうもドナルド・トランプがオフレコで買手を探しており、大手不動産会社ではなく話の通じる日本企業を求めているというような話だったようで、ウチの社長も眉唾モノだろうと最初は本気にしていなかったのですが、ハワイ支店からはどんどんと物件の詳細な資料が送られてきて、どうもトランプさんが本気で売りたがっていることが伝わってきて、ついにはニューヨークで直接会って話ができないかと言ってきていると伝えられ、そこまで言うのであれば、直接会って話を聞いてみようということになったのでした。
ニューヨークのトランプ・タワーには、ハワイ支店の担当者と日本からはニューヨークに長く住んでいたこともある私の先輩でもある部長と英語の堪能な女性秘書とウチの社長の4名で出かけていきました。
ニューヨークでのトランプさんとのミーティングの様子は、同席した部長から面白おかしく報告がありましたが、当時まだ44歳だったドナルド・トランプですが、現大統領のイメージと全く同様、『ワシントン・ポスト』が「偏見に満ち、無知で、嘘つきで、自己中心的で、執念深く、狭量で、女性蔑視で、財政面で無頓着。民主主義を軽蔑し、米国の敵に心を奪われている」と評していますが、まさにそのもので、ホラを吹き、ブラフを連発し、とんでもないディールを吹っ掛け、アジア人など人間とも思っておらず、終始馬鹿にした態度で、なめ切った嫌な男だったと酷評していました。ウチの社長も「あんな野郎がなぜ信用されるのか全くワカラン!」と、かなり腹を立てておりました。結局、「トランプ・タワー」の買収劇は全く箸にも棒にも掛からぬホラ話で終わってしまったのでした。
■その後、なぜ大富豪だったトランプさんが「トランプ・タワー」まで売りに出そうとしたのか調べてみると、1990年はトランプさんにとって絶不調の年だったようなのです。
トランプさんは、1970年代からニューヨーク州など、アメリカ東海岸を中心としたオフィスビル開発、ホテルやカジノ経営などに乗り出し、1971年に父から経営権を与えられ、1982年には『フォーブス』誌の富裕層リストに掲載され(彼の家族の推定純資産は2億ドル)、1988年にはニューヨークの最高級ホテル「プラザ・ホテル」を買収、また高利回りの社債発行や回収困難な多額投資を連発、1990年にかけて巨額の債務を抱えることになった。そして、1991年にカジノ、1992年にはホテルが倒産、また「トランプ・シャトル」や「プラザ・ホテル」も手放した。1990年から1995年の間『フォーブス』誌の富裕層リストから外された。
1990年代後半から好景気を背景に復活を成し遂げ、『フォーブス』誌が選ぶアメリカのトップ企業400社に再びランクイン。マンハッタンに新たな高級アパートメントを多数建設するなど、ラスベガスやアトランティック・シティなど、アメリカ各地に多数のホテルやカジノをオープンし、再びアメリカの大手不動産業者として返り咲いた。その後、「エンパイア・ステート・ビルディング」の50%の所有権を手に入れた。
この1990年の「トランプ・タワー」のホラ話があって以来、トランプさんのことが話題になる度に、私にとっては、ホラ吹きのブラフ野郎のトランプさんがまたニュースになっているという認識が定着しており、2017年にまさかのアメリカ大統領になってしまった時には、本当に驚き呆れた次第です。
今でも「あんな野郎がなぜ信用されるのか全くワカラン!」状態のままのトランプさんです。
この悪夢が早く終わって欲しい、早く醒めて欲しいと日々熱望しているのですが、どうもテキは「ブラック・マジック」を使っているのかもしれませんね。(越)
 
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