■よりみち~編集後記

 


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更新日2004/05/13


世界中で話題になっているメル・ギブソン監督作品『パッション』を、残酷な映画はあまり得意ではないが、やはり気になって観てしまった。コメントを躊躇させるような問題のシーンが確かにかなり多い。あまりにリアルで残酷な部分ばかりが印象に残り、観終わった後はあまり気分爽快とは言いがたい。子供や年寄りにはやはり見せたくないと正直思った。でも、このトラウマのように脳裏に焼きつくような鞭打ちのシーンなどは頭の中で反芻作業を繰り返すうちにじわじわと効いてくる感じがする。これを監督はまさに狙ったのだと思える。キリストの殉難までの12時間をできるだけ史実に忠実に再現したいという情熱を強く感じた。パッションのタイトルは監督の情熱という意味にも思える。クリスチャンではない私でも、旧約聖書の歴史を紐解くような面白さがある。自分がイメージしていた12時間とは、やはりかなり違っていて、その解釈の仕方の違いなども興味深いものがあった。さらに感じたのは、なぜいまこのキリストの受難をこのような時期にセンセーショナルに見せるのかを深読みさせることだ。実際に問題にもなっているのが、キリストを十字架に処したユダヤ教に対する批判の気持ちが強いのではないかということだ。まるで、イラクやイスラエルで戦っている者たちに、この映画を観て、「頭を冷やせ!」とでも言いたいようにも思えた。悪魔の描き方もとても感じがでていたと思うのだが、アメリカのブッシュ大統領は、いままさにこの悪魔に取り憑かれて、試されているのではないだろうか。とにかくいろいろ考えさせられる映画である。上映中にショック死した人がいるとか、メル・ギブソンが米国内で一切コメントを出さず、インタビューにも出ないとか、話題先行の映画で、賛否両論あるだろうが、興業的には大成功といってよいだろう。でも、この作品を作ってしまったら次回作に何をやるのだろうか。今度はそっちが気にかかってくる。(