■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2008/05/22


近頃世の中に拡大してきている人種?に「ストーカー」とか「クレーマー」といわれる人たちがいる。どうもニュースなどで知られるこれらの人たちは色眼鏡で見られがちで、ちょっと精神的にイッチャッテいる、危なくて危険な人たち、普通ではない特殊な人たちという目で見てしまうきらいがある。私自身もそのように思っていたし、普通じゃないのだから何を話しても無駄な存在で、一種の病気なんだろうという意識があったのだが、最近、自分の仕事の関係で、このストーカーやクレーマー的な存在を知ることになり、いろいろ調べてみると驚くべき事実があることが分かった。あるストーカー被害の対策サイトの調査結果では、これらの人たちのほとんどが精神異常者では全くないのだ(確かに明らかに精神病考えられるギリギリの人もいることはいるらしいが…)。ごく普通の生活をし、自分の将来の夢を持ち、なんら一般の人と変わらない人たちで、外見上でその手の人と認識することは困難で、そして一番厄介なことは、自分自身が行っている行為がストーキングであることを認識していないというのだ。ストーカーの多くは、自分の行動を「復讐である」「仕事である」と考えており、本人にとっては自己犠牲を含んだ善行とまで考えている人がいるのだ。クレーマーも調べてみると、同じように全く本人の意識としてはクレーマー行為という認識がないのが特徴で、正義感をもって悪い相手を追及しているわけで、ストーカーもクレーマーも本人としてはこの善意で動かされている点で共通している。根底にあるものは正義感や善意だから、なんら具体的な着地点を想定していないことがほとんどで、それが混乱を招く原因なのだが、いくら話をしても、どこが着地点なのか分からず、ついには何を一体望んでいるかも分からなくなり、当事者は理解に苦しみ、悩み出すわけだ。
この歪んだ正義感や善意(本人たちは歪んでいるなどとは考えもしないのだが)が現代社会の一番の曲者なのだと思えてくる。人の考える正義感や善意を真っ向から否定できる人がいるだろうか? 話はぶっ飛ぶがブッシュの考えるアメリカの正義感や善意によってイラク侵攻が正当化されているのであり、ビンラディンの考える正義感や善意により無差別テロが繰り返されている現実があるわけで、相手を説得するなどという次元の話ではなく、それぞれの価値観の世界を互いに認め合うしか解決の糸口はない。要は互いに離れて近づかないこと。おせっかいは焼かないことしか解決の方法はないのだ。それでも正義感がそれを許さないという出口のない禅問答になるのだろうけれど…。
ストーカーとクレーマーの対策サイトを調べていて、これらの人種が生まれる要因として「ダメダメ家庭」があり、このような家庭に育った大人たちが陥りやすいという説を唱えている。なるほど説得力があるなと思って、その「ダメダメ家庭」のたくさんある定義を読み進んでみると、実はウチの家庭もちょっとヤバイのかなと不安になってしまった。結局のところ、誰でもがストーカーやクレーマーに変身する要素を持っているということなのか…。それにしても、このようなストーカーやクレーマーの存在に怯えながら暮らす社会になってしまったということは、社会全体がそれだけ病んでいるという証拠のように思えてならない。ある人たちの正義感や善意が、ある人たちを不幸や破滅に追い込むことがあることをもっと早く気づくべきなのだが…。

 

 

 


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