■よりみち~編集後記

 


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更新日2008/05/29


政府の教育再生懇談会(座長・安西祐一郎慶応義塾長)は、子供を有害情報から守るため、「小中学生が携帯電話を持たないように」関係者に協力を求め、また英語教育の強化のため、国に小学校3年から英語を必修化するように求めた第1次報告書を福田首相に提出したそうだが、この携帯電話を小中学生に持たせないというのが、果たして実現できるのか疑問だ。教育現場で子供のメール依存症に対してかなり危機感を持ってきていることの証なのだが、ちょっと対策が遅すぎたのではないかと思える。
日本PTA全国協議会が実施している「子どもとメディアに関する意識調査」(2007年11月)では、携帯電話を持っているのは、小5で19.3%、中2が42.9%、小5、中2とも80%が自宅でパソコンを利用している。メールを1日11通以上送受信しているのは、小5で15%、中2が54%(そのうち1日51通以上というヘビーユーザーが16%)。小5の中にも「深夜でもかまわずメールのやり取りをしてしまう=11%」「メールの返信がないととても不安=18%」「食事中も手放せない=9%」など、携帯電話に依存する傾向が顕著に現れており、中2では「深夜でも~=51%」「返信がないと~=24%」「食事中でも~=21%」とさらにその依存傾向が強くなることが分かっている。さらにトラブルに発展しそうなデータとしては、「親の知らないメル友がたくさんいる=5%(小5)、35%(中2)」「学校裏掲示板に書き込みをしたことがある=1%(小5)、4%(中2)」「友だちの許可なく、他の人に番号やアドレスを教えたことがある=2%(小5)、12%(中2)」などがあり、マナー面の問題やネットの危険性をまだ十分理解できていない小中学生のトラブルが心配になるデータである。
学校内や教室内での使用を禁止している学校が多いはずなのだが、実際にはこれだけ携帯電話の所有者がいるのだから、いくら学校の規則として持たないように指導したとしても、コミュニケーションツールとしてすでに定着しているわけだから、その昔(と言ってもほんの数年前か)電車内で携帯電話の使用を禁止して、電源を切るように車内アナウンスを入れていたにもかかわらず、ほとんどの人が守らなかったように、お題目だけで効果はあまり期待できないのではないだろうか。現実的な問題として、子供たちがなぜ携帯電話を持ちたがるかということが重要で、携帯を持っていないと仲間はずれにされたり、コミュニケーションが取れないという切実な問題があるわけで、いわば子供たちの必須アイテム化してしまっているわけだ。親が子供から携帯を取り上げることは、子供同士のつながりを断ってしまう行為につながる恐れまであるわけだ。いくら関係者に働きかけても効果は上がらないように思える。最も効果の上がる方法は、携帯電話メーカーに国の方針として規制をかけ、特別な理由がないと中学生までは携帯が所有できないようにするしかないように思える。これは携帯電話会社のドル箱を閉鎖するような話で、そんなダメージの大きな規制をすんなり各社が受け入れるはずがないわけで、これも実行不可能だろう。
一番問題なのは、子供たちの「携帯メール依存症」で、これは確かに社会現象となってきていることは否定できない。隣にいる人とメールでしか会話しない現象や、メールが届いていないと不安になって、携帯電話ばかり気にする子供たちの姿は見ていてぞっとする。KY語のようにメール用に作られた言葉は確かに便利で、それを共有することで仲間意識はさらに高まるわけだが、そこには心や情緒までもが省略され、削られているわけで、表面上だけのネットの中だけでつながっているもろくて希薄な人間関係しか成立していないように思え、反対にその軽くて差し障りのない関係に快さを感じているようにさえ思えてくる。これは明らかにネット社会となった現代の傾向のように思える。大人たちがそうなのだから、子供たちはさらにその傾向が加速化しているだけのように感じる。
本来のメールのメリットは、受信者の現在の状況を気にせずに伝言を送信でき、受信者は自分の空いた時間にその伝言をチェックして返信ができるという点にあるわけで、時差のある海外との通信などで威力を発揮し、経済効果も十分あるから、どこの企業も家庭でも急速に普及したのだが、携帯メールは即時に反応しなければならないチャットメールに近い存在になってしまっていることが問題を深刻化させているように思える。携帯メールの機能を選択できるようにすれば、かなり使い方が変わるのではないだろうか。現状では、携帯メールを送信すると、サーバにメールが送られ、瞬時に相手の携帯にメールが届いたことを知らせるわけだが、メールが届いているかどうか自分の都合のよい時間に確認する方式も選択できるように機能を増やせばどうだろう。中学生までのメール受信には通知機能がない設定にし、さらにサーバーのチェック回数を制限(たとえば1日10回とか)し、いつもメールを気にすることがないようにするわけだ。当然、料金も格安設定にする必要があるが、緊急時には携帯電話で話せばよいのだし、Webの閲覧時間も制限時間制(たとえば1回30分で1日10回までとか)にすれば、かなり携帯メール依存症をなくすことができるように思えるのだが…。携帯電話会社がどこまで本気に子供たちの教育やその未来を考えているかどうか、これから試されることになるのではないだろうか。K

 

 

 


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