■よりみち~編集後記

 


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更新日2008/06/05


6/2の日曜日のテレビ東京の特別番組『久米宏 経済スペシャル“新ニッポン人”現わる!』を観て、驚いたオジサンたちが多かったのではないかと思う。私もかなりショックを受けた一人だ。“最近の若いモンは…”と言って嘆くのが世の常ではあるのだが、ここまで極端に違ってきてしまうと、嘆きを通り越して、日本の将来が怖くなってきてしまった。久米宏が言うところの<新ニッポン人>は、“お金を使わない、バブル世代後の20代の若者たち”のことだ。番組内でアンケート調査などで明らかにされたのは、「収入が少なくても貯蓄をする。将来や老後が不安だからとりあえず貯金」「大金は使わない。貯蓄の目的もない」「車を買わない。興味がない」「海外旅行に行かない。観光は嫌い」「語らいは飲み屋でなく100円マック」「ビールよりサワーを好む(ビールは苦いから嫌い)」「麻雀をしない。ギャンブル嫌い」「休日はお家でゴロゴロ。仲間と群れない」「夢は持たない。金持ちにあこがれない」などなど。バブル世代の40代とは全く正反対の堅実で、おとなしく、質素なのが特徴だ。
確かに最近の20代の若者たちの考え方が変わっているなとは感じていたが、アンケートやインタビューでここまで顕著な特徴をデータ化されてしまうと、ちょっと怖くなってくる。高望みなどせずに、コツコツ節制して貯蓄して将来の不安に備え、車や海外旅行などに興味は持たず、大酒を飲んで盛り上がったり馬鹿騒ぎもせず、自己主張もせずに目立つことを嫌い、世の中に期待もせずに平和で環境にやさしい生活を目指す若者たち。これがあの北朝鮮の若者たちであるなら、さもありなんというところだが、日本の将来を担っていく20代の若者の素顔なのだから、これで日本は大丈夫なのかと不安になってしまうのだ。 バブル世代の考え方やもっと前の世代が正しいなどとはとても言えないし、かえって色々な呪縛から開放された考え方であるとも言えるわけで、これから迎えると思われるマイナス成長時代にすでにこの新ニッポン人の世代は対応しているということなのかもしれないが、かつて20代の頃にハチャメチャをやってきたオジ族にとっては、そんなに若い時から老成してしまうことを“哀れ”で“もったいない”という感覚を覚えてしまうのだ。日本人の貯蓄額は1544兆円だそうで、とんでもない貯金が眠っている国なのだから、将来の不安のためだけに溜め込まないで、その貯蓄を世の中に回すだけで、経済がすぐに活性化するわけで、そこんところのシステムを若い世代が担っていることをもっと知るべきだ。
自分が20代の頃に“老後”や“年金”のことは少なくとも考えたことはなかったし、将来への不安はたくさんあったが、“貯蓄”という概念は理解できていても、それは無理とあきらめていた。やりたいことが次から次へと膨らんでしまうから、それどころではなかった。それほど、現代の若者は将来の不安ばかりなのだろうか。生まれた時代のせいなのだろうか? バブル崩壊後の右下下がりしか経験がないのだから、その時代に対応した考え方が新ニッポン人を作り上げているという結論めいたことをこのTV特番では使っているのだが、どうもしっくりこないのだ。すべてを教育問題にするつもりはないが、根源が教育のベーシックな部分にあるように思えてならない。時代がここまで変わってきているのに教育システムが旧態依然で、受験のための教育から全く脱皮できていないわけで、ユニークな人間を育てる発想やシステムに国として投資してこなかった結果のようにも思える。
番組で一番驚いたことが、20代の若者が「海外旅行に行かない」ということだった。TVで観て知っているし、観光旅行など興味がないということなのだろうか。それともそもそも人間に興味がないということなのだろうか。バーチャルな映像に慣れきったTV世代だからこそ、「リアルな旅」に意味があると思うのだが…、オジ族がいくら力説してもこれは通用しないのだろうね、きっと。

 

 

 


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