■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2006/06/22


「アフリカ映画」。果たして今までアフリカの映画監督の作品を観たことがあっただろうかと思いながら、カンヌ国際映画祭のある視点部門グランプリ作品『母たちの村』(ウスマン・センベーヌ監督作品)を観に出かけた。映画のテーマは、なんと「女性割礼廃止」である。私が小学校の頃だったと思うが、とにかくはるか昔に『世界残酷物語』(グァルティエロ・ヤコペッティ監督作品:1962年;やらせ演出バリバリのシュールな作品で、ヤコペッティは元ゴシップ雑誌の記者だったという)という洋画がブームになったことがあったが、その中の残酷なシーンの一つに少女の「割礼」があったことをなぜか鮮明に覚えているのだが、まさかその少女の割礼が現在進行形で続けられているということにショックを受けた。現在でも、女性割礼がアフリカ全土で年間300万人にも行われているというのだ。地球はまだまだ広いということなのか、まったく我々とは異なる価値観が崇拝されている地域が存在しているわけだ。自分の無知にあきれてしまったが、割礼について調べてさらに驚いた。女性割礼か行われているのは世界で28ヵ国に及び1億2000万人か受けているというのだ。原始キリスト教のコプト教徒に多く、カトリック、プロテスタント、イスラム、アミニズムなどのあらゆる宗教、階層、民族を超えて、伝統的習慣として行われているようだ。イスラム教の伝統なのかと思っていたが、宗教も関係なく、地域の土着的な風習というのが真相のようだ。対象は7歳から10歳ほどの子どもで、最近はさらに低年齢化しているらしい。表向きの目的は、「女性をレイプから守るため」ということだが、現実には男性の処女崇拝や女性器支配、さらには女性の性感を奪うことにあるようだ。割礼を受けていないと売春婦扱いされたり、結婚のときに欠陥品とされて、親に婚資が支払われなかったりするため、それを恐れる親が自分の娘に強いることになるという。社会の悪しきルールとは知りながらも、従わざるを得ない現実があるようだ。今でも消毒もしていないナイフやカミソリで行うことが多く、毎年、感染症や出血多量で死んでいる。アフリカで出産時の母子の死亡率がきわめて高いのも割礼が原因らしい。このような現実を変革しようとアフリカ映画の父と呼ばれているうすマン・センベーヌ監督が立ち上がったわけだ。資料では83歳だというからこれも驚きである。映画はとてもシンプルで、ストーリーもアフリカ的にゆったりと流れるように進行してゆく。役者もたぶん半数以上は現地の一般人が参加しているようで、決して全員がうまいわけではないのだが、顔の表情が豊かでその人間的な魅力が出ている。映画からは、アフリカの雄大な大地のパワーが伝わってくる感じで、たぶん初めてのアフリカ映画なのだが、依然どこかで観たような懐かしさがあった。地球は狭くなったと思っていたが、まだまだ広いことを実感させられた映画だった。(K

 

 

 

waragutsu
■猫ギャラリー ITO JUNKO