■よりみち~編集後記

 


■更新予定日:毎週木曜日

 

 

 

 

 


更新日2008/07/10


G8洞爺湖サミットがやっと終わってくれた。地元北海道、特に洞爺湖周辺の住民にとって、この洞爺湖サミットははっきり言って「迷惑」でしかなかったように思える。景気が極端に低迷する北海道にとって、観光産業は最後に残された希望なので、サミットが洞爺湖に決まった時にはもろ手を上げて喜んだものである。ところが蓋を開けてみたら……、観光客が増えるどころか、規制づくめで観光客が敬遠し、洞爺湖は閑古鳥が泣いていた。経営難でシャッター閉めていたみやげ物屋には、道庁から“必ず観光客が押し寄せるから店を営業して欲しい”と、過疎化でシャッター通りと化した風景をメディアに見せてはまずいとわざわざお願いして回ったそうだ。その観光客が押し寄せるという甘い言葉を信じてビアガーデンをオープンした店もあったようだが、赤字続きでついにサミット前に閉店してしまったようだ。増えたのは警官と機動隊員、それに警察車両や機動隊のバスだけで、それは驚きを通り越してあきれかえってしまった。特にサミット開催1週間前の7月1日あたりから、札幌市内や千歳、そして洞爺湖周辺はまるで戒厳令のような様相を帯びてきた。主要幹線は警官と機動隊、それに警察車両で満ち溢れていた。見せる警備というヤツなのだそうだが、交差点ごとに警官が立っていて、特定の交差点では、赤信号になって止まった車両を抜き打ち調査するのだ。当然、渋滞になり、特に営業車は大変である。札幌駅も10メートルごとに警官が立っているような状態で、警官の紺色のベストには大阪府警や静岡県警の文字が入っていて、全国から2万人近くの警官や機動隊が応援に借り出されていたようだ。
今回の洞爺湖サミットで政府は600億円の予算を計上したらしい。そのうちの半分の300億円が警備費用なのだと言う。全国から召集された2万人の警察官や機動隊の交通費、宿泊代、食事代、クリーニング代などなど、確かに膨大な経費がかかっているはずである。3年前のイギリスでのサミットの総予算が200億円というから、日本はその3倍の予算をかけたことになる。福田首相は今回の洞爺湖サミットの成果を強調しているようだが、果たして600億円をかけて引き出した成果には、その価値があったのだろうか? 確かに各国政府の要人が一箇所に集まってスキンシップで本音を語る機会は貴重だと思うが、これだけテロやデモが予測されているなか、300億円までの警備費用をかけてリスクを侵して集まる理由があるのか疑問である。ITが世界的に進展しているのだから、衛星回線で世界同時テレビ会議を行うことは技術的に難しいことではないはずで、問題になるのは時差だけだろう。そこは議長国の時間帯に合わせてもらうしかないのだが、費用面でも安価で、セキュリティの問題も皆無で、時間的な制約も少なく、それこそCO2削減効果も十分ありそうだ。
洞爺湖サミットの会場となった「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」の裏話がある。このホテルがなければ洞爺湖サミットは成立していないほどキーワードとなったホテルなのだが、このホテルはバブル崩壊前のギリギリの時期に悪名高きデベロッパー「カブトデコム」が社運をかけて建設した会員制超高級リゾートホテルで、全国のお金持ちを会員に集めることが狙いだったのだが、思わぬ誤算から会員が増えず経営難に陥り倒産、最後はホテルが競売となり、現在の会社が再建を果たしている。その思わぬ誤算というのが今回のサミットで問題にもなった「霧」だったのだ。バブル時代の北海道リゾートのキーワードは「ゴルフ」と「スキー」で、当然、メンバーの目的は洞爺湖の温泉とゴルフだったわけだ。ところが、洞爺湖周辺は夏のシーズン、3日に一度、朝は「霧」で覆われゴルフどころではないのだ。せっかくの休日に霧でゴルフをキャンセルせざるを得ないメンバー制のリゾートに人が集まるはずがなかった。瞬く間に悪いウワサが流れ、リゾート会員権が売れなくなったという。今回のサミット決定の際、どうもこの悪いウワサを封印してしまったようだ。その結果、3日間晴天なしのモヤの中の異例のサミットとなってしまったわけだ。世界中に霧に隠れる洞爺湖と神秘的なウインザーホテルが映し出されたわけで、果たして北海道の観光PRになったのかどうかとても心配である。反対に「霧」の名所になるかもね。(

 

 

 

 


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