■よりみち~編集後記

 

■更新予定日:毎週木曜日

更新日2002/07/11

「種から育てると愛着が違いますよ~」。マン盆栽家元・パラダイス山元さんにそう言われて、もう我慢できなくなった。私も「植物を種から育てたい、そしていつの日かそれを食べてしまいたい」ってずっと思っていたのだ(家元は、食べたくて育てているわけじゃないだろうけどさ…)。そんなわけで、私のお腹におさまるべく芽を出したのが、青しそ、ルッコラ、パセリの三種。毎日せっせと水をやり、日に当て、甲斐甲斐しく世話を焼いている。あぁ、早く大きくなって私のお腹をいっぱいにしてくれないかな~。 (瀬尾


「オタク」とは、アニメ、コミックス、フィギュアなど、幼児性の残る趣味についてマニアックな人々のことだが、もともとは、その手の人たちの間で常用される二人称が名の由来だという。すなわち「オタクがこの前話していた本みつけたよ」などと使うらしい。この「オタク」という二人称は、家庭の主婦の間で相手の家、家族などを呼ぶときに使っているものだ。したがって女性言葉である。「昨夜(ゆうべ)の雷すごかったわねぇ、お宅ではどうだった」など。一方「宅」または「宅の」を主語として使うと、こちらは「宅の主人」を指す言葉である。もちろん家族や家庭総体を指す場合もあるが、その意思を中心的に決める一家の主を暗に示している。昭和30年代後半の海外TVドラマ「バークにまかせろ」の主人公エイモス・バークは、大金持ちなのにロス市警殺人課の課長という設定で、運転手付きのロールスロイスでロサンゼルスのアッパータウンを走り回る。このバーク氏が、二枚目で女性に目がないという役回りながら、使う言葉がオネエ言葉で、部下の若手刑事や年配のベテラン刑事などを「お宅」呼ばわりするのである。昭和40年代に入ると、オネエ言葉を話す30歳代、40歳代の男性が、東京の日常にも出現していた。いきつけの近所の喫茶店にも、その手のオジさんが毎日来ていて、「カレシ、なんの仕事してるの?」「いえ、まだ高校生です」「あらっ、オトナっぽいわねぇ」などと声をかけられたりした。「ねぇ、そう思わない、カノジョォ」とカウンターの中の女性に同意を求めたりする。この人たちの二人称は「カレシ」「カノジョ」である。こうした三人称を二人称に転用するような倒錯した言葉使いの人たちが、だからといって、必ずしも同性愛者だったわけでもない、というところに、この時代の風俗の奇妙な尖端性があるように思える。こんなささいな風景も、いまはむかし「古きよき時代」という心象になってしまった。(KOM